ピアス-4
「いい加減に逃げるのやめたら?」
高校時代からの友人のさくらちゃんが腰に手を当てて
仁王立ちで私の前に立った。
「加奈さ。吉岡先輩から逃げてこのまま自然消滅を狙ってるわけ?」
私とは正反対のさくらちゃんはものすごくはっきりしている。
そんなところが好きだけど
今回ばかりは、さくらちゃんの言うとおりには出来ない。
「さくらちゃん。逃げられるものならずっと逃げたいんだけど。」
あの日、吉岡先輩の部屋を出た私は、泣きながらさくらちゃんに電話をして
すぐにおいでという言葉に甘え
高校時代から何度も行ったことのある家に向かった。
電車の中でも涙は止まらなくて
さくらちゃんの心配そうな顔を見たら
さらに止まらなかった。
さくらちゃんは何も言わずに話を最後まで聞いてくれて
翌日から吉岡先輩を避け始めた私を責めもせず
手助けもせず、ただそばにいてくれた。