くじびきは運命を変える。-1
今日は、2ヶ月に一度の席替えの日。
クラスの人気者の隣の席を皆でとりあった経験って、ない?
「飛鳥!あたし絶対、鷲見君の隣の席狙うわ!!!!」
「はは…頑張ってね」拳をつくって燃える親友に苦笑しながら、私は周りを見た。
女子が集まって、なにやらヒソヒソ話している。
私は暇なので、その会話に耳を傾けてみた。
『やっぱり、慧くんの隣がいいわ……』
『私も私も!鷲見君、かっこいいよね…』
『頭もいいし…理想のタイプよね』
……まあ、ほとんどの皆(女子達)が狙うのは、このクラスの人気者、鷲見 慧くんの隣だということがこのことから見てとれる。
サッカー部レギュラー、先生や後輩からの人望もあつく、生徒会長までこなしている
人気者。
流石というか、なんというか。
「燃えてるなぁ……」
所詮、私たちのクラスの席替えの方法はくじ引きなのだ。
勝つか負けるか、
運しだい。
席替えでそこまで燃える必要ないと思うけどなぁ…、と呟いた。
「それはあんたがズレてんのよ……飛鳥」
私の独り言に、友達のひとりがつっこんだ。
「ズレてるって……酷いね?……別に私は鷲見君には興味ないだけだし……」
「んじゃあ、誰かの隣になりたいとか、そういうのはないの?」
「うーん」
肩をすくめて見せて、笑った。
友達は私が答えをはぐらかそうとしている事に気づき、異論をとなえようとしたが、
「皆席につけー、席替えするぞ」
という先生の言葉に
「あ、ヤバっ」
と急いで自分の席に戻って行った。
席替えが始まった。
鷲見君を見る女子達の目が獲物を狙う獣のようで、鷲見くん以外の男子達は少し怯えていた。
当の鷲見君は、友達と仲良さそうに話している。
結構……図太い?
級長が、くじの紙の入った箱を持って、席をまわりはじめた。
皆、順番にそれをひいていく。
「侑生、侑生」
「何よ?飛鳥。ごめん、今ちょっと手が放せないから…後にして」
侑生は、なにやらよくわからない文字をノートに書き、それにむかって、むにゃむにゃと唱えていた。
……怪しい。
「………何してんの」「おまじないよ、おまじない!」
あたし今回の席替えに命かけてんのよ!と言い、侑生はまた視線をノートに戻して、おまじないを続行しはじめた。
「………………」
それが呪いの儀式のように見えたということは、侑生には黙っておいた。
「……め、夏目!」
「え?……あ、ごめんごめん…」
いつの間にか私の席にもくじがまわってきていた。
いつまでたってもボーっとしていた私にしびれをきらした級長に、軽く詫びる。