第4話 陵辱の始まり(後編)-2
「ほらっ、奥さん。早くぅ」
蛇沼が両足を広げ、グロテスクなモノへの愛撫を催促してくる。
フェラチオという言葉も、その意味も知識としては知っていたが、紗希にとっては未体験の行為だった。
(裕一さんにもしたことないのに……)
(しかも、こんなに気持ち悪いモノ……。できない……できるわけない……)
吐き気を催すような嫌悪感に、紗希は、思わず唇を引き結び、目の前のモノから目を逸らしてしまう。
「あれぇ、いいですかぁ?そんな態度で。私の言う事が聞けないんですかぁ」
蛇沼の言葉に、忘れかけていた恐怖が蘇る。
あの写真が近所の目に触れたら、何よりも、裕一に知られたら……。
それは、新妻にとって最悪の事態だった。
新妻には、選択の余地はなかった。
生まれて初めての、それも好きでもない中年男へのフェラチオを強いられるほかなかった。
紗希は目を閉じ、おそるおそるとソレへと顔を近づける。
口元に垂れ落ちる髪を抑える指には、夫婦の愛の証が光っていた。
遠慮がちに伸ばした舌が、肉の幹に触れる。
紗希は、これ以上どうしていいか分からず、ただ舌を小さく動かすことしかできなかった。
「奥さん、何ですか、それぇ。もっと気合入れてやって下さいよぉ。旦那にもして上げてるんでしょう?」
蛇沼が、せせら笑いながら、嘲りの言葉を浴びせてくる。
「こ、こんなこと、しません」
顔を上げた紗希が、こんな男と裕一をいっしょにしないで欲しいという反発の意を込めて言う。
しかし、紗希の男性経験では、かえって、それが蛇沼の劣情を煽ることにまで気が回らなかった。
「ウヘヘヘッ、本当ですかぁ〜?」