第4話 陵辱の始まり(後編)-12
写真を紗希に向かって放り投げる。
それは、まるで娼婦を買った男が、はした金を払うときのような仕草だった。
事実、蛇沼は、風俗店で特上の女に当ったときのように満足した気分だった。
新妻の吸いつく肌、ふるいつきたくなるような裸体、搾り取るように収縮する膣、その全てが極上だった。
まだまだ逃がさない。とことんまで新妻の肉体を堪能してやる。
そう思いながら、蛇沼はその場を後にした。
「おっ、これ美味しいよ。紗希は、また料理の腕を上げたんじゃないか」
「本当?嬉しい。お代わりはいる?」
「ああ、頼むよ」
「うん。今、持ってくるから、ちょっと待っててね」
新婚夫婦の食卓。
裕一が優しさに満ちた笑顔を紗希に向けていた。
それを見た紗希は、裕一が、そして裕一との愛情に溢れた生活が世の中で一番大切なものだと実感した。
あの後、紗希は、他の男が家に居たという痕跡を懸命に消した。
シャワーを浴び、何度も身体を洗い流した。
そして、しばらくして帰宅した裕一を笑顔で出迎えた。
内心、紗希の心臓は破裂しそうだった。
もしかして、裕一が何かに気づくのではないかと心配で仕方なかったのだ。
しかし、裕一はいつもと変わらなかった。
妻がほんの数時間前に、この場所で、他の男に陵辱され、よがり、深いアクメに溺れていたなど、想像すらしていない様子だった。
紗希は、安堵すると同時に、裕一に対して秘密を抱えることに心を痛めた。
料理を美味しそうに口に運ぶ夫を見て、紗希は思った。
自分の裕一への愛情は、何一つ変わることはないのだと。
だから、裕一を傷つけてはならない。
裕一に害を及ぼしてはならない。
決して、秘密を悟られてはいけない。
少しの間だけ、我慢するのだ。
少しの間だけ。
思いを強くする新妻だった。
【続く】