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三叉路 〜three roads〜
【学園物 恋愛小説】

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元カノ-4

ゆっくり後ろを振り返ると、郁美は私に背を向け、土橋くんの前に立ちはだかっていた。


自転車を押して来た沙織と大山くんは、その二、三メートルほど後ろで戸惑いながら顔を見合わせている。




そして、土橋くんは目を見開き、驚きと戸惑いを隠せない表情のまま、固まっていた。


私は自転車をその場に停め、土橋くん達のそばに急いで駆け寄る。


「修……。あたし、やっぱりやり直したいよ……」


郁美は気持ちが高ぶっているのか、人目をはばからず涙をポロポロこぼしていた。


「でも、こないだ電話で話しただろ? 俺はやり直すつもりは……」


土橋くんはオロオロしながらもなだめるように言うけれど、


「嫌!」


と、郁美の強い口調に遮られた。


そして次の瞬間、彼女は人目もはばからず土橋くんの胸に飛び込んだ。


私は反射的に二人から目をそらして、奥歯をギリッと噛み締めた。


周りの生徒達は驚いたり、ニヤニヤしながらチラチラと土橋くん達の方を見て行く。


土橋くんは真っ赤な顔で慌てて郁美の両肩を掴み、その小さな身体を引き離した。


「い、郁美……、落ち着けって!」


「落ち着いてるよ。ずっとずっと悩んで考えてたんだもん。あたしは、やっぱり修が好きなの……」


郁美はいやいやと首を振りながら土橋くんに訴えている。


郁美の細くて白い脚は、寒風にさらされていたのか少し赤みがかっていた。


土橋くんに確実に会えるあてはないけど、ただ会いたい一心で、たった一人で長い時間待っていたのだろう。


郁美の思いが真剣であればあるほど、私は現実から目を背けてどこかへ逃げ出したくなった。


しばらく黙り込んでいた土橋くんは、フゥッと息を吐いてゆっくり大山くんの方に向き直ると、


「……倫平。俺、やっぱ今日はやめとくわ」


と、言った。


「あ……ああ、わかった」


「郁美、とにかく別の場所で話そう」


土橋くんはそう言って、私の方に向かって歩き始めた。


一瞬、目が合ったけど、彼は眉をひそめてすぐさま私から目を逸らした。


私は下唇を噛み、目をキツく閉じて、彼らが通り過ぎるのを待つしかできない。


するとすれ違いざまに、彼は私にしか聞こえないような小さな声で、


「……悪ぃ」


と、呟いた。


ハッと目を開け後ろを振り返ると、いつものように少し背を丸めてズカズカ歩く後ろ姿。


そしてそのすぐ後ろを追うように、郁美が小走りで私の横を何も言わず通り過ぎて行った。


ただジッと二人が並んで歩く後ろ姿を見つめるしかできない私には、あの二人の間に入り込む余地などまるでない。


これが、ただの“友達”と、以前付き合っていた“彼女”の差なんだと思い知らされたのだった。




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