月の光と都会の光-1
き、気まずい…
冴木由梨、28才。
誕生日はとても困った状況になりました…
右側には大輔くん。
左側には高橋さん。
打ち上げにお邪魔して、スタートしたときはこの配置だった。
なのに、気づけば大輔くんは向かい側に移動していて、酔った片桐さんが目の前で大輔くんにからんでる。
スタートして4時間。
とっくに日付は変わってしまった。
他の方々はもう帰ってしまった…
隣で涼しい顔している高橋さん。
私…どうしたらいいのかな??
「今日はお疲れ様、そして由梨ちゃんおめでとう!」
この高橋さんの挨拶で始まった飲み会。
ご飯は美味しいし、お酒の種類も多く、なによりお店はとてもオシャレだった。
途中ケーキまで準備してもらって、皆さんにお祝いしてもらった。
会社の方々は皆さん気さくでホントにあっという間の楽しい時間だった。
そろそろ帰ろうかと大輔くんと話して準備していたけど、何となく帰れなくなった。
今、目の前で起こっている片桐さんの大輔くんへのアタック?が始まったからだ。
大輔くんは
「片桐、俺もう帰るから。」
と言うものの、片桐さんは聞く耳持たず。
大輔くんの腕を掴んで離さない。
もう1時間ずっとこの調子だ。
私は高橋さんと話しながらちびちびと飲んでいる。
「高橋さん、大丈夫ですか?」
さっき思いきって高橋さんに聞いたら、
「俺はね。まさか片桐がここまでなるとはね。ちょっとびっくりで…むしろ由梨ちゃんは大丈夫なの?ごめんね。」
という具合に逆に心配されてしまった。
応え辛く、曖昧に笑ってしまった。
すると、高橋さんは何も言わず2度、ポンポンと頭の上に手を置いてくれた。
それから2人で話していると、片桐さんの声が聞こえた。
「大輔、私を置いて帰るの?」
思わず手が止まってしまった。
高橋さんも飲んでたお酒でむせて、げほげほ言っている。
大輔くんを見ると、困った顔してため息をつき、言った。
「片桐、俺は帰らなきゃいけないから。」
「今日くらい一緒にいてよ…」
片桐さんの声が震える。
何となく見てられなくてつい席を立ってしまった。
「と、トイレ行ってきます」
「はい、きをつけて」
高橋さんがそう言って笑いながら手を振ってくれる。