月の光と都会の光-4
「頼むよ由梨さん…お気をつけくださいよ」
「え、私?」
「おう。よし、帰るぞ!」
「か、帰るの…?」
いきなり言われ何を気をつけるかもわからない。
しかも大輔くんは立ちあがり私に歩くよう促す。
高橋さんと片桐さんは??
どうしても気になって尋ねる。
「片桐さんは?」
「帰りながら説明する。疲れたろ?帰ろうぜ。」
大輔くんはそう言って、私の手を引き歩き出した。
お店を出るとタクシーが停まっていて、乗り込むと大輔くんがホテルの名前を告げた。
走り出すと少し気が抜けてふーっと息を吐くと、大輔くんからも聞こえてきて、思わず笑ってしまった。
その後、大輔くんが「巻き込んで悪かった」といって、片桐さんのことを話してくれた。
片桐さんは元カノで、大輔くんが最後に付き合っていた彼女さんだった。
大学が別で、留学中に知り合って、付き合うことになった。
お互い日本に戻って暫くはうまくいっていたが、1年経つ頃にはお互いバイトや研究で忙しく、会うことはほとんどなくなっていた。
大輔くんはそれでも仕方ないと思っていたが、片桐さんはそうではなかったみたいで、それから半年経った頃いきなり他に好きな人ができたからと別れを言われたらしい。
そのときのことはよく覚えてる。
大輔くんはかなり落ち込んで、よく飲みに行っては励ましてた。
その後大輔くんは片桐さんのことは吹っ切れたみたいだけど、逆に片桐さんは大輔くんが好きだったみたい。
大学を卒業して、就職して、仕事一筋で頑張ってきたときに、今日ばったり会ってしまった。
少し懐かしくなって、元に戻りたいそう思ってしまったらしい。
でも大輔くんはやっぱり無理だと思ったみたい。
きっとまた同じ結果になりそうだからって。
"ごめん"と言って、荷物を持ってあの場所に来たらしい。
「そっか…大丈夫??」
気づいたらそう聞いていた。
大輔くんはちょっと控えめに笑ってた。
その笑顔が少しさみしく感じた…
タクシーがホテルに着き、部屋に戻るとお互い寝る準備を始めた。
先にシャワーを使わせてもらい、すっきりしてベッドでゴロゴロする。
さっきの片桐さんとの話を思い出し、ちょっと複雑な気持ちになってしまう。
待ってるつもりだったのに、お酒のせいかフワフワ気持ち良くて、ついうとうとなってしまう。
頑張ってるつもりだったのに、結局眠ってしまっていた。
遠くで大輔くんの声が聞こえた気がしたけと、もう覚えていない。