ツンデレ。-8
「せんせって、甘えんぼ?」
アラタの頭を抱きしめ返すアキ。
「でも、なんか気持ちわかるけど」とクスクス笑う。
「…なに笑ってんだよ」と言い放ち、左手は太ももへ。
「人間だったんですね、せんせーも」と、またクスクス笑う。
あ…、と思い「間違った、アラタも」と言い直すと、アラタが顔を上げた。
―――再び長いキス。
吐息に混ざる煙草とコーヒーの香り。
とろけてしまいそうなんかじゃなく、きっととろけている。
はしたない顔をしているだろう、でもそんなものどうでもいい。
今、この男が与える愛を存分に受け止めてあげよう。
キスの合間に「アキ」と、たくさんの名前を呼ばれた。
「なぁに」「アキ」「なんですか」「アキ」「はい」
不器用な人だったのね、と思いながら、優しく名前を呼ぶその人に応える。
ふいに擦っていた太ももから、アキの胸へ手が伸びていく。
たちまち露になるバスト。やんわりと揉みしだかれる。
堪らず声が出るが口の自由を許してはもらえない。
「っあ…!んん…」
これでもかと堪能されてから、再びするすると太ももへ下がる大きな手。
利き手ではない左手が潤いきった泉へと到達していく。
ぎこちなさのある指の動きで抽出を繰り返されると、焦らしともどかしさで悶える他なくなってしまうのだ。
声を出せない苦しさからやっと開放されたアキ。知らずのうちに片脚は隣のテーブルへ掛け、大股開きの状態でアラタの指を迎え入れていた。
「あっ…ああ…だめ…」
次第に高まっていく自分の感覚に「だめじゃねえよ」と時折言われるこの声が、更にアキを快感の渦へ追いやる。
「俺の身体だ」
少しスピードを上げられ、自分でもわかるほど熱いものが滲み出ていく。
「俺しか見るな」
なんて傲慢な言葉。でも今はそれが不器用な愛だと知っている。知っているからこそ敏感に反応してしまうこの身体を、もう制御できない。
もう…イっちゃいそう―――
あんあんと悶えることでしか表現出来なくなったアキの首へしゃぶりつくアラタ。
強い独占欲。狙った獲物は逃がさない。
囚われた子猫もまた、もう逃げられない。
「俺は―――アキしか見えてない」
その言葉と同時に、魔性の左手の親指がアキの突起を捕えた。
更にスピードを上げられ、どんどん高みへ追いやられていく。
「あ、あ、あ、もうだめ、イっちゃう―――っ…!!」
目の前がぱち、と弾けた。
ぎゅうぎゅうとアラタの指を締め付け、波打つアキの中。
息も絶え絶えに全身が快感の渦に巻き込まれていった。
しかしそれも僅かな時間、待ち望んだ瞬間は一瞬で脱力感に変わる。
力んで震える太ももから徐々に力が抜けていく。
ゆっくりと引き出される指が離れる時、とぷっと音を鳴らした。