饗宴の夜-20
コージの車の中。
やはり、わたしは、後部座席に座っていた。ユウキは、隣で眠りこけている。
あの後、失神から回復して、わたしはいきなりユウキから告白された。
付き合ってくれと言われたのだ。彼との歳の差は一回り以上ある。
やはり、彼も勘違いしているのだ。
好きだったのは、あの瞬間だけ。終わってしまえば、他人に戻ってしまう。
ユウキとわたしの間には、そういう歴史がないのだから。
たまたま出会って、たまたまわたしが彼を巻き込んでしまっただけだ。
それでも、ユウキは聞き分けがなかった。
仕方がないから、一枚だけ、写メを撮らせてやると言ってやった。
但し、顔は手で隠すと。
ユウキは少し照れくさそうに、わたしにオシッコをしてくれと強請った。
している所を、写メで撮るという。
そんな発想はわたしに無かったので、しまったという思いがあったが、約束したことだ。
足を広げて、立ったまま小便をした。
腰を前傾させて、手で眼だけ覆って、卑猥なポーズでたっぷりと出してやった。
妙齢の女の立小便姿なんて、もはや一生見ることは無いのではないか。
こんな風に、彼らの記憶に残るのも悪くないかもしれない。
し終わると、二人のものが、また勃起していた。
わたしは、自分の身を捧げて、彼らの勃起を鎮めてやったのだ。
さすがに疲れたのか、ユウキは車内で寝入っていた。
そんな静かな車内で、コージがポツリと言った。
「なあ、カオリ。俺と、付き合えよ」
「駄目よ。わたし、ユウキ君に断ったばかりじゃない」
「ユウキは、まだ若いから」
「あなたも若いわ。それに、あなた最初はわたしのことオバサン呼ばわりしてたのよ?」
「それは」
「いいのよ、実際歳の差はあるし。それに、もうわかってるでしょう?」
「――わかんねぇよ」
わたしは、彼らと普通に付き合っていけるような女ではない。
痴女なのだ。誰かとほんの一瞬だけ燃え上れば、それで満足する。そういう女だ。
彼らは、まともな女を見つけてまともな恋愛をしていくべきなのだ。
コージは、もうそのことが、それとなくわかっているはずだった。
それに抗うように、コージはもう一言呟いた。
「…………わかんねぇよ」
わたしは、何も答えなかった。
夜の峠を、寝付いたユウキを起こさないように、コージは丁寧に運転をしている。
もう彼は、大人の男なのだと思えた。
車窓を眺めると、街の明かりが見えてきた。
あの街についたら、今日一日の全てが終わる。
そしてまた、燃え上がるような刹那の出会いを求めて、わたしは街を徘徊するのだ。
−SIDE-B・完−