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インスタント・ラバーズ
【痴漢/痴女 官能小説】

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グッド・モーニング-1

 人でごった返す、通勤時間の電車の中。
 朝の爽やかな空気など、この車内のどこを探しても見当たらない。
 男の汗の臭いと女の香水の匂い、それが車内の独特な湿った空気と交じり合ってむせ返りそうだ。
 わたしは、この臭いが嫌いではない。
 決していい臭いではないが、頭のどこかのスイッチを切り替えてくれるような気がする。
 それは日常から非日常へと切り替わる、危険極まりないスイッチだ。
 そして、今のわたしにとって、その非日常こそが生の実感を得られるものなのだ。

 人よりも若干小柄なわたしの体の四周は服を着た肉の壁で囲まれていた。
 様々な人の生活が交じり合った臭気を感じながら、その肉の壁でわたしの胸といい尻といい、問答無用で揉み込まれていく。
 普通の女なら一刻も早く脱したいはずの状況だが、わたしはどうも普通ではないようだ。
 この圧迫される感じもまた、嫌いではないのだから。

 車内がグラリと揺れると、それに応じて肉の壁もわたしを押しつぶすように揺れた。
 誰かの肘がわたしの胸に押し付けられる。
 誰かの腰やももの部分がわたしの尻に食い込んでくる。
 それは意図的かもしれないし、偶然かもしれない。どちらでも良かった。
 胸の鼓動が少し早くなって、体の感覚がそれにつれて敏感になっていく。
 尻の部分に触れている誰かの足がぞろりと撫でるように動くと、体に衝撃が走る。
 気持ちいい。気持ちいいけど、物足りない。
 てらてらと弱火であぶられている。気持ちは昂ぶっているが、どこかもどかしい。
 そのもどかしさがたまらないのだが、それもそろそろ限界だった。
 生の肉が欲しい。直接的な快感が欲しい。――――セックスがしたい。
 我ながら変態的だと思った。
 数年前まで自分の性癖に劣等感を感じて悩んだりもしたが、今は吹っ切れている。
 こんな性癖を喜んでくれる人間も居ると知ったからだ。
 
 周りを見上げてみる。
 少し髪の薄くなった威厳のある顔立ちの男性、背の高いややあどけない顔をした学生風の男性、スーツを着た真面目そうな新人社会人といった面持ちの男性。
 
 今日は、誰にしようかな――――


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