サイテー-6
初めて呼び捨てにした俺にびっくりするように振り返った彼女は
山崎に小さく手を振ると
俺の方に駆け出してきた。
その場所から俺を見つめる山崎の口は
意地悪く口角が上がり
「俺は知ってる」とばかりに
ニヤっと笑った。
「加奈。どうした?」
余裕がないように彼女につぶやいて
手をつなぐどころか
逃げ出さないように肩を抱けば
びっくりしたように
「吉岡先輩。どうしたんですか?
山崎くんとちょっと話しただけですよ?」
何気なく言った加奈のその言葉に
頭に血が昇るのがわかった。
どうして。
俺はいつまでたっても「先輩」で
元彼の山崎は「くん」なんだよ?
そこに加奈の本心があるようで
それに気づいてしまった俺は自分自身を抑えられなかった。
加奈の手を引っ張って
無言で俺の部屋に連れ込む。
「い・・痛いです。吉岡先輩」
敬語を話す加奈に更にわれを忘れる。