媚肉の宴-2
2.
自分の心の内なる声が聞こえる。それは被虐を求めるマゾ牝の叫び。
監禁調教で心にMの烙印を押された愛花はその声にしばし苦しんだが、愛しい美貴の奴隷となって自分の全てを委ねることでようやく心の平穏を得た。
一方、志津はどうだったであろうか?
退院後の志津は剣道部コーチとパートタイムに復帰し、日常を取り戻したかに見えた。
しかしその心の内ではマゾ牝の血が荒れ狂っていたのである。
ある日曜日の午後。
愛花と志津は横浜に行き、母娘水入らずでショッピングを楽しんだ。
お気に入りのカジュアルブランドショップで素敵な服を買い、中華街で夕食。
こんなに楽しい時間は本当に久しぶりだ。
帰り路の高速で軽自動車を走らせる志津。
助手席に楽しげに談笑していた愛花の目には、インターの出口付近で鮮やかなラブホテルのネオンが飛び込んできた。
「REST」
「STAY」
「3時間休息」
…と断片的に文字が読み取れる。
それを見た愛花は、意を決して志津に話しかけた。
「…ママ…。ホテルにお泊りしない?」
「…えっ?」
はっとして志津は振り向いた。
愛花は助手席で左膝を立てて、志津を誘っていたのだ。
いつの間にかふんどしを脱ぎ捨てた愛花は、自らの生殖器を両手で左右から思いっきり広げていた。
さらけだされた肉の庭は染み出したとろとろの淫汁で濡れ光っている。
膣口が「くぱぁ…」と口を開け、穴ぼこの奥から薄桃色の処女膜が飛び出しているのがわかった。
そう、愛花は未だ処女なのだ。
その上部から勃起したクリトリスが包皮を剥かれて真っ赤に充血し、ぷるぷる…と震えていた。
こんな美味しそうなマンコを目の前にして我慢できるレズビアンはそういない。
キキキ―――ッッ!!
思わず志津は急ブレーキをかけた。
軽自動車は路側帯にガクン、と乗り上げる。
後ろから凄い勢いで車が追い抜いていき、暗い車内をライトが一瞬照らし出した。
「見て…。こんなに濡れてるの…。ママの舌でいっぱいイカせて…?」
「…………」
…ごくっ。
志津は喉の渇きを覚えたような辛そうな表情を見せ、しばし沈黙した。
「愛花…悪い子ね…。私がいけないことを教えちゃったせいね…」
「ママ…ねぇ、オマンコしてっ!!」
さらに激しく愛花はおねだりを繰り返した。
舌なめずりをしながら、なまめかしい目つきで志津を誘っている。
「…浮気はダメよ。せっかく恋人になってくれた船橋さんに悪いじゃない?」
「ううん、いいの。正直に告白すれば、お姉様は許してくれるわ。浮気した私を思いっきり罰してくれるの」
「……愛花……」
志津はにっこりと微笑む。
そしてその頬につー…と涙の雫が流れ落ちた。
「私を心配してくれてるのね? でも大丈夫よ。大丈夫だから…」
志津は絞り出すように言った。
その声に釣られて愛花も泣き出した。
「だって…。ママ、あんな酷いことされたでしょ? 今でもセックス奴隷になりたくて、いじめて欲しくて身体が疼くんじゃない? 理事長先生から紹介されたカウンセリングにも最近行ってないみたいだし…。私、心配なの…」
「愛花…本当にいい子ね…」
志津は愛花にそっとキスすると、再び車を発進させた。
(ママ…。今きっと自分の心の声と必死に戦っているのね…。負けないで!!)
愛花は祈るような気持ちで母の横顔を見つめていた。
3.
しかし、愛花の不安が的中したのはそれからほどなくだった。
発端はある日の早朝。
いつもより早く目を覚ました愛花は、カーディガンをはおってトイレに立った。
トン、トン、トン…。
軽い音を立てて愛花は階段を降りてくる。
と、その時、玄関の向こうで聞きなれた排気音。続いて軽自動車が車庫に入ってくる音が聞こえた。
慌てて物陰に隠れてそっと覗き見すると、ガチャリと鍵を開けて志津が入ってきた。サングラスをかけてコートを羽織っている。
急いでコートを脱ぎ捨てる志津。その下は素っ裸だった。
首筋や乳房に残るキスマーク。背中とお尻には幾条もの真っ赤な鞭の痕。
愛花は思わずはっ…、と息を飲んだ。
志津は人目を避けるようにして自室に飛び込んでいった。
(ママ…。虐めて欲しくてオマンコが疼くのね? 辛いのね? 可哀想に…)
愛花はそっと声を殺して泣いた。
以来、志津が夜中にこっそり外出しては明け方に戻る…ということが繰り返された。
夜泣きする身体を鎮める火遊びは続いているようだった。
美貴やつかさに相談することもできず、思い余った愛花は八幡薫にもらった名刺を思い出し、その携帯に連絡を入れた。
横浜市内のカフェ。
ここは薫が指定してきた待ち合わせの場所である。
カラン、カラン…と来客を知らせる鈴が鳴り響き、ドアが開いた。
約束の時間に5分ほど遅れて愛花がやってくると、既に薫は席についてコーヒーを注文している。
「愛花ちゃん、久しぶりね」
「ゴメンなさい薫さん、急に呼び出したりして…。他に相談できる人がいなくって…」
「いいのよ。愛花ちゃんみたいに可愛い依頼主ならいつでも大歓迎だわ」
そう言って薫は愛花の手に指を絡ませた。
思わずびくっと手を引っ込める。
「…あっ」
「そんなに気にしないで。ほんの挨拶よ」
スキンシップに戸惑う愛花を魅力的な笑顔で和ますと、薫はさっそく本題に移った。
「あなたに頼まれたママのことだけど…。調べてみたら、だいぶ重症ね…」
「そう…なんですか…」
「横浜のレズビアンバーで行きずりの相手とSMプレイに興じているわ。多い時で週に3回…」
愛花は緊張した面持ちで再び身をこわばらせた。