第3話 陵辱の始まり(前編)-1
第3話 陵辱の始まり(前編)
「じゃあ、行ってくるよ」
「はい、行ってらっしゃい」
「紗希」
「もう……裕一さんたら……」
「いいじゃないか。これがないと、会社に行く力が起きないんだよ」
「もうっ、子供みたいなこと言って」
クスリと笑う紗希。
裕一が顔を寄せてきた。
紗希も顔を上げて応える。
チュッ……
いつもの朝。幸福に包まれた新婚夫婦の朝だった。
裕一を送り出した紗希は、今日も掃除に洗濯と、家事を手際よくこなしていった。
それも、ようやくひと段落ついた頃だった。
ピンポーン……来訪者を告げる音がした。
インターホンの液晶画面には、玄関先に立つ一人の男が写っていた。
見覚えのある顔。隣に住む蛇沼だった。
いったい何事だろうと訝しく思いながら、紗希はインターホンに出た。
「ああ、奥さん。蛇沼ですが、今、ちょっとよろしいですか?」
インターホンに向かって話す蛇沼は、ムスッとした愛想のない顔をしていた。
(もしかしたら、ゴミの出し方を間違えたかしら?)などと、思いながら、
「はい、ちょっとお待ち下さい」
紗希は、玄関に向かった。