揺り椅子-1
穏やかな日差しが差し込む部屋で、1人の女性が揺り椅子を揺らしている。
彼女はキアルリア=C=ファン、通称キャラ。
島国ファンのお姫様だったが、現在は西の大陸にある魔法大国ゼビアの王妃専属近衛騎士。
しかし、今は諸事情により夫婦揃って休みを貰っている。
理由は彼女の腕の中に居る小さな赤ちゃん。
艶々の黒い髪にふっくらとした頬っぺた……見ているだけで幸せだ。
「……寝たか?」
そこに、夫のアースが音を立てないようにそおっとドアを開けて入ってくる。
キャラは微笑んで頷き、彼を手招きした。
アースは足音を忍ばせて歩き、キャラの横に立って彼女の腕の中を覗き込む。
赤ちゃんは彼女の腕の中でぐっすりと就寝中。
たまに唇がくちゅくちゅ動いたり、ニヤっと笑ったりするのが何とも言えず可愛いらしい。
「小さくて弱々しい生き物は苦手じゃなかったっけ?」
「弱くねぇだろ?あんだけ苦労して産まれてきてんだ……弱い筈が無いよ」
キャラは赤ちゃんから目を離してアースを見上げて微笑んだ。
「確かにな」
その時、赤ちゃんがパッチリと目を開ける。
その目は吸い込まれそうな緑色……キャラそっくりの綺麗な瞳だ。
「起きちゃった?ランス?」
ランスと呼ばれた赤ちゃんはパチパチ目を瞬く。
しかし、まだ眠かったようで再びゆっくりと瞼を下ろした。
それを見ていたキャラとアースは顔を見合わせてクスクス笑う。
「ノービィは?」
「あいつはパワフルだな……散々暴れた後、疲れてさっき寝たとこ」
「まさか魔力持って産まれてくるとはねぇ……」
「ステラは苦労するな」
「母は強しだよ……ベルリアさんもエンさんも居るし大丈夫」
そう、キャラが抱いている赤ちゃんは兄ギルフォードとステラの間に産まれた子供。
実質、ファンの次期国王だ。
しかも産まれたのは双子だった。
兄はランスロット=O=ファン、通称ランス。
黒髪に綺麗な緑色の目をしている。
妹はジェノビア=C=ファン、通称ノービィ。
金髪碧眼の美人ちゃんだ。
この2人が産まれた時、実はちょっとした騒ぎが起きた。