ため息1つ-1
「あの・・・吉岡先輩ですか?」
久しぶりに・・・
本当に久しぶりに自分の名前を疑問形で聞かれた。
俺を知らない子ってまだまだいるんだな・・・
そう思った自分におかしくなる。
自分で思っているほど有名じゃないのか?
「吉岡先輩ですか?」
俺が返事をしなかったから
その子はもう一度俺に問いかけてきた。
大学の学食でさっきまでうるさかったはずなのに
今は俺たちのやりとりを
聞き耳を立てて全員が聞いている。
「そうだけど?」
イイ女なら誰とでも寝ると噂の俺と寝て
自分の価値を高めたい女か?
そんな風に見えないけど
そんな女が多いことに慣れてきた俺は
目の前の素朴な子にも疑いの目を向けた。
「山崎くんに言われて・・・」
「山崎?」
素朴な子から悪友の名前が出たことに
いささかびっくりして
聞き返した。
山崎は・・・
男友達としてはいいやつだけど
女から見れば、
女にだらしないただのイケメンだ。
あいつ・・・
こんな子にも手を出してんのか?
そんなとき、学食のテーブルにおいた
スマホが震えた。