プロローグ-1
プロローグ
「あらぁ…田村さん、こんにちわ」
「ん?…やぁ、こんにちは」
武志が振り向くとお隣の沙智子だ。
こんな所に沙智子がいることなど考えてもみなかった…
なんとか挨拶を返した武志だが、まめ鉄砲を食らったハトみたいな
顔にはそんな想いが透けて見えた。
「田村さんもここを利用されるんですか?」
「いつもというわけではないんですが…」
「わたしもたまにですけど…」
レンタルCDショップの出口で武志が思わず包みを抱えなおした。
借りたのがアダルトCDだったからだ。
「どんなのを借りたんですか?」
「あ…むかし観た西部劇を…奥さんは?」
「わたしも田村さんと同じようなモノを…」
話をそらそうと沙智子に話を振った武志だが、あっさりいなされて
話をつなげられなくなる。
「それじゃぁ、ここで…」
「あら、お車でですか?」
「ええ…」
「それでは…しつれいします」
沙智子は隣人らしくない丁寧な返事を返して自分の車に向かった。