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魔眼王子と飛竜の姫騎士
【ファンタジー 官能小説】

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6 飛竜の親子  性、残虐描写-2

***

 
「はぁっ!……はぁ……はぁ……」

 脂汗を浮かべ、カティヤは飛び起きた。

「きる?」

 ナハトが心配そうに顔を寄せ、暖かい鼻息がかかる。

「あ……あ、すまない……お前を寝かしつけるはずだったのに……」

 頬の涙をこすりとり、両手でペチペチ叩く。

 アレシュの城に逗留して四日目の夜だった。
 寝付けない様子のナハトに厩舎で付き添ううち、自分が先に眠ってしまったらしい。
 ここは暖かい地方だし、季節も初夏だから、毛布一枚でも風邪を引く心配は無い。

「きるるる……」

 長い首を伸ばし、ナハトが厩舎を見回す。
 急ごしらえといえ、飛竜にとって快適な厩舎に整えられていた。
 天井も高く、羽根を伸ばすスペースも十分。干草も上等の品だし、餌箱には新鮮な野菜や果物が入っている。

 はっきり言って、騎士団のストイックな生活より、格段にお姫様扱いされているナハトだ。

「アレシュ王子の計らいといえ、賓客待遇をされているなぁ」

 苦笑し、ザクロを一つとってやった。

「あまり贅沢を憶えると、帰ってから辛いぞ」

 とはいえ、自分と王子の妙な賭けに、ナハトをつき合わせてしまっている負い目もある。
 言葉を喋れなくとも、パートナーたる飛竜の心境はだいたいわかる。
 多分、ナハトはホームシックを起こしているのだ。

「きる……」

 硬い鼻面で、そっと頬をつつかれた。
 飛竜の方でも、パートナーの感情には敏感だ。

「……ああ。お前と初めて出会った日の夢を見たんだ」


 ちっとも帰ってこないカティヤを心配し、兄が探しにやってきたのは、あのすぐ後。
 ボロボロの妹を見て、何があったか察知した兄は、急いで人目につかないようカティヤを連れ帰った。
 そして、母がカティヤの身体を洗っている間に、あの子竜も連れ帰って来たのだ。
 まだ巣立ちできる歳ではなく、あのままでは死んでしまうと判断しての事だった。

 ナハトと名づけられた子竜は、里で育てられる事になり、やがてカティヤのパートナーとなった。
 母から、ナハトを見るたびにカティヤの傷が開くのではと、心配していた。と告げられたのは、その時だ。
 笑って、もう気にしていないと嘘をついた。
 見え透かれていただろうけど。

 あの日、カティヤとナハトは互いに大切なものを失った。
 一生消えない傷を刻み込まれた、悪夢の日だった。


 顔の筋肉を動かし、無理に笑う。

「良いほうに考えよう、ナハト。お前に会えた日だよ。悪い事だけの日じゃなかった……」



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