5 種の分岐点-4
アレシュが着替えるというので、カティヤも寝室から出た。
ナハトの厩舎に向かいながら、一緒に退室したエリアスにそっと尋ねてみる。
「王子は、なぜあれほど話したがらないのでしょうか?」
単なる我がままや意地というより、もっと別なものがある気がする。
エリアスが、小さく口元を緩めた。
「アレシュさまはきっと、自分の口から話して貴女に同情されるのが嫌なのです」
「同情……ですか?」
「おっと、喋りすぎとまた怒られますね……厩舎はあちらですので、わたくしはここで失礼します」
エリアスは書類を角を曲がる直前、やはり喰えない笑みを浮かべて振り向いた。
「一ヵ月後を、わたくしも楽しみにさせて頂きます」