『私の初めてのひと』-1
いつもと同じ、学校からの帰り道。
夏の県大会に向けた練習に夢中になってしまって、帰りが少し遅くなったこと以外はなにも変わりないはずだった。
でも…
(この電車一時間違うだけでこんなに混むんだ)
私はスーツ姿のサラリーマンの大群に押し潰されるのを防ごうと、スクールバッグをぎゅっと胸に抱いて、閉まっているドアの方へ避難した。
もうこれ以上乗るなんて無理だよと思っても、駅につくたびに止めどなくひとが乗ってくる。朝練で早く家を出るため、朝のラッシュもほとんど経験したことのない私にとってこれはまさに苦行だった。
(く、苦しい…)
後ろのひとがぴったりと背中にくっついている。でも私が降りる駅まではもう自分がいる方のドアは開かないはず。
とりあえず前からも押し潰される心配はなさそうで少しほっとしたそのときー
(えっ)
スカートのすそになにかが触れたような気がして、びくりとする。
でも確認したくても全く身動きがとれない。
(もしかして虫かな…気持ち悪い…)
「!」
次の瞬間、確実に足に誰かの指が触れたのがわかり、自分の予想が全く外れていたことを知った。
(これってまさか痴漢?ど、どうしよう…)
振り払いたくても、スクールバッグを胸に抱いてドアに押し付けられているこの状況では、手を動かすことは難しい。足を動かして見ようとしても、後ろのひとに背中をぐっと押さえつけられているような状態で、足先を動かすことしかできない。
そうしているあいだに五本の指はそっと太股をなであげ、スカートの裾から中へ入ってきた。
(いやだ。気持ち悪い!)
こういうときって声をあげればいいっていうけど、なぜかできなかった。
私はただスクールバッグをきつく抱き締めてぎゅっと目をつぶっていた。
ドアにぴったりと体を押し付けているのに、ぐいぐいとその隙間に大きな手が差し込まれる。
(あっ!)
指はとうとう足のつけねにまで到着し、私の大事な部分を掌で包み込むようにそっと押し始めた。
「や、やめ…」
勇気を出していおうとしたとき、ポニーテールのせいでむき出しになっている私のうなじに、後ろのひとの荒く、生温い息がかかった。
ぞっとする感覚が体を走り、またなにもいえなくなる。
指はパンツの隙間からとうとう中に侵入し、直接その割れ目をなぞり始めた。下の方からゆっくりと上へ…。
(あっ!だめ、そこは…)
毎夜、布団のなかでひとりこっそりと触っている一番敏感なところを、その指はまるで知っているかのように的確に探り当てる。