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続・天狗屋物語
【SM 官能小説】

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続・天狗屋物語(前編)-2

新しく改造中の仕置き部屋は、天狗屋から車で十五分ほどの距離にある廃寺だ。
天狗屋の奥座敷の仕置き部屋も手狭になったので、どこかに本格的な仕置き部屋が欲しいな…
なんて、爺さんと話をしていたところ、話にのってきたのが、この廃寺を管理する不動産屋の
堀田というデブオヤジだった。

このオヤジは天狗屋の常連で、六十歳くらいのSM好きのエロオヤジだが、以前からのオレの
ちょっとした知り合いだ。もとは暴力団員だったが、聞くところによると今は足を洗っている
らしい。その堀田が、当時SMクラブの売れっ子女王様だった燿華という名前の「谷 舞子」
のことをはっきり憶えていたのだ。

ところが、堀田は、燿華と同一人物の「谷 舞子」という女を、彼女がSMクラブにいた以前
から、なぜか知っていたようで、仕置き部屋に彼女を連れ込んだら、ぜひ一発やらせてくれと
言われたことがある。

やることしか考えていないデブのエロオヤジだと思っていたら、意外なことに、かなりハード
なプレイを好む筋金入りのSMマニアらしい。


その廃寺は、街中にあるというのに、その一角だけはこんもりと繁った林の中の墓地に囲まれ、
人が寄りつく気配はない。古びた寺の地下室は、以前は納骨堂として使われていたようで、薄
気味悪いところもあるが、仕置き部屋としての広さや雰囲気は申し分ない。この地下室だった
ら、監禁して責める女がどんなに泣き叫んでも、まわりに聞こえることはないし、逃げられる
場所でもない。

…女を虐めて楽しむには、まずはSMルームのセンスのある雰囲気が大事なんだぜ…なんて、
もっともらしく堀田のオヤジが言うけど、このデブオヤジのどこにセンスがあるのか、その顔
からは逆立ちしても思い浮かばない。


爺さんは、ここのところあまり元気がない…。

数日前だった…。爺さんに、燿華という女王様の写真が掲載されたSM雑誌を見せたときから
様子が変わったのだ。

「この燿華って女が、谷 舞子と同一人物だ…元はSMクラブの女王様だぜ…いい女だと思わ
ないか…」

古いSM雑誌に掲載された燿華の写真を、懐かしげに手にとって見つめる爺さんの背中にオレ
が声をかけたとき、なんとなくふだんの様子とは違っていた。

「どうかしたのか…爺さんの知っている女なのか…」と、オレが尋ねると、爺さんはしばらく
黙り込み、いや…と、顔を小さく横に振った。

そして、これまで見たこともないような少し寂しげな笑みを浮かべたのだ。

…ほんとうに燿華…いや、「谷 舞子」って女を仕置き部屋に連れ込むのか…と、爺さんは
オレの方を振り向くことなく尋ね、彼女と会えるのが楽しみだな…と、気が抜けたみたいに
一言だけ小さく呟くと、珍しく酒を飲むことなくオレの部屋を静かに出て行ったのだ。
何かを知っている様子だったが、それ以来、燿華のことを爺さんに聞くことはなかった。




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