舐-4
俺はそのまま窓枠で眠っていたらしい。
そして、目覚めたときには彼女はもう部屋に居なかった。
お気に入りのカッターもベッドに転がしたままで、雨と共に消えてしまったらしい。
おかしな話だ。
俺はただ望みを叶えただけなのに。
二月後。
僕は新しい彼女を自室に招き入れた。
いつも僕の腕にすがるようにして歩く、イトオシイ彼女だ。
今日からはきっと、ここで共に暮らすのだろう。
ご飯を作らず、掃除も洗濯も適当にしている自分に大層やきもきしているようだから。
「ここがベッドルーム……僕の性格の割りには片付いてるだろ?」
コクコクと頷かれる。
血の臭いから逃れるため、壁紙から家具まで全て取り替えたこの部屋は、彼女の趣味に合わせた趣へと様変わりしていた。
キョロキョロと部屋を見回していた彼女が、ジッ、と枕元の花瓶に注目する。
「一人寝は淋しくてね、普段は薔薇をいけてるんだ」
意外だ、と言わんばかりに彼女が目をぱちくりとさせた。
「でもこれからは、君という可憐な花のお世話が出来るから、もうそこに薔薇は要らないよ」
手を取り、甲に口をつけた。
「薔薇よ、どうかこの手の中に」
彼女の顔に血が昇った。
顔に一発軽いビンタが飛んでくる。
彼女はそのまま俺の手を振り払うようにベッドの方を向いた。
「素直じゃないなぁ」
子供じみた様子に、喉の奧でくっくっと音を立てる。
花びらを一枚ずつ剥き、蜜をすする様を想像しながら。
こんどの オキニイリ、 は
すぐにコワレないといいな。
end
さて、壊れているのは誰でしょう?
A.作者