男友達-7
「おい、なんかいい感じだな」
私は土橋修の言葉が聞こえないくらい二人の姿に目を奪われていた。
手を繋ぎながら沙織は大山倫平を見上げて楽しそうに笑い、大山倫平もまた何か面白い話でもしているのか、空いた右手を一生懸命動かしていた。
「……いいなあ」
ボソッと口から出た言葉は初めて自分が素直に思った本音。
悔しいけれど、あの二人……。
「なんだかんだ言ってもお似合いだよな」
「…………」
私が黙っていると、土橋修はペットボトルのお茶をグイッと飲んでから、
「倫平はさ、一年の時からずっと沙織のこと好きだったんだ。でも話もしたことないし、単純に沙織に一目惚れしただけだから、すぐに熱が冷めるだろうって思ってたけど、今の今まで他の女を好きになることもなかったよ。あいつは、すげぇ一途だし、沙織を泣かす真似は絶対しないと思う。まあ、こないだのイメージだけだと倫平が嫌な奴って思っても仕方ないけど、本当はいい奴なんだ」
と言った。
私は、自転車のサドルに置いた手をグッと握りしめる。
「……沙織が大山くんのことどんどん好きになっていってるのは嫌でもわかるよ。でもそれが面白くないって今でも思っちゃうの。私って最低だよね……」
サドルに置いた手に視線を落とし、唇を震わせながら小さく呟いた。
「……あいつ、カラオケ苦手でさ。まああの歌聴いたらわかるだろ。だから普段俺らと遊ぶときでもカラオケは嫌がるんだ。でも、今日カラオケに行くことになったのは倫平が決めたことなんだよ」
私はハッと顔を上げて土橋修の顔を見た。
彼の視線は、すっかり小さくなった沙織達の方を見ていた。
「ホントは沙織に自分の音痴を知られたくなかったと思うんだ。でも、沙織からお前がカラオケが得意って聞いて、お前と打ち解けるためにカラオケを選んだと思うんだ」
私は先程のカラオケでの大山倫平の淋しそうな笑顔を思い出した。