精霊人-9
(……カリオペが惹かれたのもそういう所かねぇ……)
スランは1人納得してポロを抱え直し、メインストリートに降りる。
「うぁ〜…荷物もびしょ濡れ……着替えも台無しじゃん……」
ゼインは犬のように頭を振って水気を切った。
「やんっ」
カリーは飛んできた飛沫に嫌な顔をし、自分のタオルを投げる。
「さんきゅっ」
「つうか、何だ?それ」
2人の所に来たスランはゼインの足元にある白い塊に目を向けた。
「「ん?」」
言われて初めて気づいたゼインとカリーは、声を揃えて下を向く。
ゼインの足元に転がっている白い塊……それは……。
「イルカだぁ♪」
カリーはそのイルカを抱き上げて、頬でスリスリする。
イルカはカリーに揺さぶられ、頭をガクガクと揺らした。
「って……ヤバくね?イルカって水の生き物じゃね?」
「あっ」
ゼインに突っ込まれたカリーは慌てて水路へ行こうと立ち上がる。
「ああ〜っ悪ぃ悪ぃっ大丈夫だからっ!!」
その時、メインストリートの向こうから息をきらして男が走ってきた。
がっしりとした体系に、良く焼けた肌……いかにも海の男です、といった感じの男だ。
茶色い髪に黄色い目は元気いっぱいで、ドタドタとメインストリートを走る。
「ホント、悪ぃっ!!怪我しなかったか?」
男は4人の目の前に来るとニカッと笑った。
「怪我はねぇけど……」
「そっか!良かった!」
白い歯がキラリと輝いて眩しい。
「それより、イルカちゃん」
カリーは腕に抱いていた白いイルカを男に差し出した。
「え?ああ、おいっクイン!気がついてんのは分かってんだよっ」
男がイルカをぺしゃりと叩くと、クインと呼ばれたイルカはパチリと目を開ける。
つぶらな黒い瞳はくるりとカリーを見上げ……その胸の谷間にうりうりと顔を埋めた。