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アンバランス×トリップ
【ファンタジー 官能小説】

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精霊人-8

「行けぇっ!ゼイン!やっちゃえっ!」

 木の上から無責任に囃し立てるカリーを見て、余計な事をしない方が2人には良いのかもしれない、とスランは思った。

「よっしゃあ!!俺に任せとけぃっ」

 ゼインは意気揚々とバスタードソードをギリッと握る。
 退屈な船旅とその他モロモロの鬱憤を晴らすつもりだ。
 ぼにょにょんと跳ねた水の塊は真っ直ぐにゼインに向かって来る。

「一刀両断っ!!」

 ゼインがバスタードソードを大きく振りかぶった、その時。

「ストォーップ!!斬るなぁ!!」

 水の塊の遥か向こうから怒号が聞こえ、ゼインは慌てて腕を捻る。
 迫り来る水の塊は直ぐ目の前……バスタードソードを捻って、刃の部分で斬るのでは無く、刀身で受け止める事にしたのだ。

ベチィッ 

 見事、水の塊を刀身で受けたゼインの足がズズッと下がる。
 水の塊は真ん中を止められ、ゼインを包み込むように左右に広がって行った。

「い゛っ?!」

 今にも飲み込まれそうな勢いに、さすがのゼインも顔色を無くす。

「ええっと……解!!」

パアンッ

バシャーッ

「ぶっ!!」

 怒号の主が何やら叫んだと同時に、水の塊が割れてゼインに降りかかった。
 水の塊だったものはただの水となり、メインストリートの両脇にある水路へと流れていく。
 残されたのは全身びしょ濡れのゼインのみ。

「アハハハハッさっすが、ゼイン〜かっこいい〜」

 からかって大笑いするカリーに怒る気も起きず、ゼインはどんなもんだい、と拳を突き上げて見せた。

「なあ……嬢ちゃん……こいつら馬鹿なのか?」

 スランは屋根の上で抱えたままのポロに聞く。
 得体の知れないものに自ら突っ込んでいくゼインが良く分からない。
 スランの質問を聞いたポロは、彼の腕を軽く引っ張ってメインストリートの後ろを指差した。
 そこには小さな公園があり、沢山の子供達が遊んでいる。
 もし、水の塊がそっちまで行っていたら、直撃は無いにしてもパニックになっただろう。
 子供や親が入り乱れて怪我人が出る事間違い無しだ。

「成る程…ね」

 ゼインはそれを避ける為に盾になった。
 さっきの一瞬で周りの状況を把握し、最善の対応をしたゼインをスランは見直す。
 スランは暗殺者なので、まず自分の安全が第一だ。
 周りの人間に気を使う気など全くない。
 ポロを気にかけるのは単に彼女がターゲットだから。
 今のところ暗殺命令は出ていないが、彼女を監視するように言われているので死なれては困る……それだけだ。


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