精霊人-14
「いや、さっき宮廷魔導師だからって……」
「いいよいいよ〜事後承諾って事にするから♪」
いいのか?宮廷魔導師ってのはこんなに軽いものなのか?
正直、ゼイン達は得体が知れない怪しい一行だ。
それを簡単に信用して助けるのは良いのだろうか?
「クインが教えてくれたよ〜公園に水の塊が行かないようにしてくれたのと、ケイが『斬るな』って言ったらホントに斬らなかったってね。あれ、斬ってたら多分クイン真っ二つだし〜」
あはは〜と笑うエン……いや、笑うとこじゃない。
「それで充分だし……一番はポロちゃんが可愛いからかなぁ〜?」
エンはポロの前にしゃがんで首をちょいっと傾げた。
「もしかしたら痛かったり、キツかったりするかもしれない。でも、君が頑張れるなら全力で助けてあげるよ?」
真面目な顔で真面目に問いかけたエンに、ポロはコクリと喉を鳴らした後しっかりと頷く。
「決まり♪」
エンは満足そうに笑って、よいしょっと立ち上がった。
「じゃ、具体的にどうするか話そうか〜?」
勿論、それ相応の報酬は貰うと言ったエンに、どれだけ搾り取られるのか不安になるゼイン達だった。
話し合いの結果、報酬代わりにお使いを頼まれた。
ファンの火山の火口付近にしか生えない魔草をとってきて欲しいとの事。
とても貴重な魔草で、この時期に咲く紫色の花が欲しいそうだ。
普段ならエンがアビィで行くのだが、国王の弟の奥さんが臨月なので城を長く離れるワケにはいかないとの事。
普通の人は道のりが険しくて行けないが、冒険者だから大丈夫だよね?の一言で押しきられてしまった。
まあ、多分、大丈夫だろう。
その間、ポロはケイの家でお留守番。
お店を手伝いながらエンの解除を受ける事になった。
エンも国王にバレないようにコソコソ作業するので、余計時間がかかるのだ。
だから、本当にそれで良いのか宮廷魔導師?と思ったが、せっかくやる気になってくれてるので黙っておく。
その夜、ゼインは眠れずに宿屋の屋根でボケッとしていた。
カリーとポロは2人仲良く寄り添って寝ている。
スランは飲みに行くと言って夜の街に繰り出した。
ゼインも誘われたが飲めないし気分じゃなかったので断った。
「よっ」
そんなゼインの所にスランがひょいっと顔を出す。
月が出てるとはいえ、灯りも持たずに軽々と屋根を歩くスラン。
その手には酒瓶がぶら下がっていた。
「どうも」
ゼインは両手を後ろについたままスランに挨拶をする。
その横に腰を下ろしたスランは、一応酒瓶を軽く上げて飲むか?と聞いた。
「飲めねぇって」
「勿体無ねぇなぁ」
酒が飲めないなんて人生の半分は損している、と言うスランにゼインは苦笑する。