精霊人-11
「うちは冷蔵も出来るから大体皆使う時に取り来るんだよ。公共冷蔵庫でもあるワケだ」
「うえ?!冷蔵ってスッゴい高級品じゃん?」
良く知らないけど、魔法が関わっていた筈だ。
「ああ……俺、魔力持ちだから余裕」
設備さえあれば魔力の補給など、自分で出来るから維持費はかからない。
「え?魔法使いって事?」
いきなり魔法使いに会えるとは何てラッキーなのか!!
カリーは思わずケイの両手を握って、期待を込めた瞳で見つめた。
ポロもその横でコクリと喉を鳴らす。
「いやあ……魔法使いって言うより、魔力持ってるだけってレベルだなあ」
ケイが魔力持ちだと分かったのはファンに魔物軍団が押し寄せた時……つまり、1年もたってないぐらい。
「うちの姫様は『召喚師』っつう魔力持ちの中でも数が少ない能力を持ってて、異世界の魔獣を呼び寄せて使役出来るんだ。で、その召喚師の特徴として精霊が見える」
それで、人間と精霊の橋渡しが出来るらしい。
「魔力持ちと精霊が契約すると、俺みたいな『精霊人』になるってワケ」
「へぇ〜…誰でもなれるの?」
「いや、精霊に気に入られたらなれる」
魔力を持っていても、なりたくてなれるものじゃないようだ。
「そんなワケだから、俺は魔法使いとしてはかなり未熟だよ……何?魔法使い探してんの?」
ケイの質問にカリーはポロの事を説明し、着替えたゼインが部屋から出てくる。
「ふうん……確かに魔法がかかってるみたいだけど……それしか分からん」
ケイはポロの枷を見て胸を張って威張る。
「でも、魔導師なら紹介してやれるよ?」
「「マジ?!」」
ケイの申し出にカリーとゼインは身を乗り出した。
「マジマジ。どうせもうすぐ来るし」
ケイは微妙に視線を反らせてハハッと乾いた笑いを漏らす。
「良かったな、ポロ」
ゼインはポロの頭をぐしゃぐしゃにして笑い、カリーはぎゅうっとポロを抱いた。
ポロは戸惑っているが、期待もあるらしくアイスブルーの目がキラキラしている。
(……タダってワケにはいかねぇよなぁ……)
1人、冷静なスランはテーブルに肘をついた手に顎を乗せて、お茶をすすりながら頭の中で勘定してしまった。
その時、メインストリートが大きく陰った。
スランは顔を上げて影を作った正体を見てギョッと固まる。
それは巨大な赤いドラゴン……ドラゴンはバサバサと翼を動かしてゆっくり降りてきた。