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THANK YOU!! ver.秋乃
【純愛 恋愛小説】

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THANK YOU!!-5



これ以上蹴りを受けたら、保健室行きになってしまう。

そう悟った秋乃は蹴り飛ばされた際にベストのポケットから落ちて自分の腕のあたりにある携帯の画面を見た。
頻繁に届くメールで、画面は明るくなっていて時間が確認出来た。
それを見て、小さく笑みを零した。
急に笑った秋乃を見て、女子は一瞬ひるんだ。しかし、強気な姿勢は崩さない。

「なんで、笑ってんの。気持ち悪」
「もう一度食らえよ」

笑い合いながら、もう一度秋乃のお腹めがけて足が向けられた時。
黙ったままでただ落ちている携帯に目線を送っている秋乃がついに口を開いた。

「10・・」
「・・なに」
「9・・8・・」
「な、に、こいつ・・」

ただカウントダウンを続ける秋乃に、ただならぬ空気を感じて顔を見合わせる女子。
その間も秋乃のカウントダウンは続く。
止まらないカウントダウンに、女子は次第に恐怖が増していく。

「3・・2・・」
「やめ、ろよ!!」
「1・・」
「黙れよ!」
「・・0」

ゼロ、と呟いた瞬間学校の敷地中にくぐもった鐘の音が響いた。
それは学校の始業チャイム。時間帯で言うと朝のHRか授業開始だろう。
だが、それを確認する術を彼女たちは持っていない。急に聞こえたチャイムの音に慌てる彼女たちを横目に、秋乃は立ち上がった。

「この、チャイムは・・授業開始。ここから高校棟に行くには・・10分はかかる・・。早く行かないと、欠席扱いになって内申に響きますよ・・?」

意地悪い、という表現がピッタリな程の笑顔を見せた秋乃に、女子は頭に血が上ったが実際に大学受験を控えている彼女たちにとっては授業の欠席扱いは困る。
舌打ちして、これで終わったと思うななどと秋乃を突き飛ばし、捨て台詞を吐いて屋上を出て行く。
その焦った後ろ姿を見ながら、秋乃はヨロヨロと力なくフェンスへ歩いた。そして、ガシャンと強い音がする程フェンスに身体を預けた。
背中に鈍い痛みが走ったが、蹴られたお腹の痛みよりは大分マシだった。
身体をぐったりとフェンスに預けながら、先程の女子の焦った後ろ姿を思い出して、笑い出した。

「あはは・・」

ひとしきり笑い終えると、携帯を取り出した。画面を見ると、8時20分。
朝のHR開始の時間。
そう、秋乃はさっき女子を罠にかけた。
高校生特有のネクタイ色をしている先輩たちを見て、高校生だと瞬時に分かった。
さらに上履きの学年カラーで三年だと確信をしてああ告げた。
まさかあんなに慌てるとは・・。
そんなにも内申に響くのが怖いのだろうか。ならばこんなことをせずに勉強に集中すればいいものを。

「・・本当、どうしようもなく救いようがない“先輩”たちばかりだ・・」


小さな仕返しが出来た秋乃はふっと息を吐き出して、ズルズルと身体を横にずらした。
フェンスを背に、身体を寝かせた。
睡魔に襲われながらも、携帯のメールを確認してると一つのメールで指が止まった。
差出人は・・朝篠雅弥。
何故アドレスを知っているんだと眠ろうとする頭で考えていて、なんとか一つの記憶を引っ張り出す。

「(・・ああ、そういえば・・部活入った時に交換したっけ・・)」

そんなことを思い出しながら、メールを開く。が、表示される前に、焦点が合わなくなってまぶたが重くなって降りてくる。
ダメだと思いながらも、お腹に響く痛みから抗うことをしなかった。
メールが開く数秒の間に、秋乃は深い眠りへと堕ちていった・・・。



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