危険な忘れ物2-2
二人はショップを出ると並んで徹の家に向かう。
途中、恵子は徹に連絡しようとしたのだが、あいにくスマホは電池切れだった。
(もー、肝心な時にぃ…)
それにしても、と恵子は隣で歩く悟を横目で見る。
確か徹より三歳年上だと聞いている。
引きこもりというだけあって、髪は伸びているし、肌も青白い。
それでも、さすがは兄弟というか時折髪の下からのぞく横顔は驚くほど端正で、やはり徹に似ていた。
いや、むしろ徹より背も高くスタイルがいい分、きちんとしたらかなりカッコイイのではないか。
引きこもりをしている人なのになんだか話しやすいし。
恵子がそんなことを考えている間、二人はどんどん徹の家に近付いていた。
「さ、どうぞ」
「あ、ありがとうございます。おじゃまします」
悟が家の鍵を開けてくれた。
恵子は頭を下げると、靴を脱いで二階へと上がる。
勝手知ったる徹の部屋でパラパラと雑誌をめくりながら徹が帰るのを待っていた。
(徹、まだかな。早く帰ってこーい)
その時、コンコンと部屋がノックされた。
「…はい」
ドアを開くとそこには悟がいた。
「恵子ちゃんに渡したいものがあるんだけど」
「えっ?何ですか?」
「ちょっとこっち来てくれる?」
突然の話に恵子は戸惑った。
しかし、相手は彼氏のお兄さんなのだ。
出来るだけ感じよくしていたい。
「分かりました」
徹の部屋のすぐ隣。そこが悟の部屋だ。
部屋に入った途端、恵子は固まった。
部屋は徹とほとんど同じ間取りだ。部屋もきれいに片付いている。
しかし、パソコンのそばにある大量のAVが恵子の目を釘付けにした。
陵辱、痴漢、レイプなどショッキングな見出しが恵子の目に飛び込んでくる。
それでも恵子はあえて無関心を装い、いかがわしいDVDから目を逸らすと悟に訊ねた。
「何ですか?渡したいものって」
「うん」
悟はそう言うと枕の下から何かを取り出した。
「これ。なくて困ってるんじゃないかなーと、思って」
差し出されたものを見て恵子は絶句した。
(な、なんで…)
驚きと恥ずかしさでいっぱいになる。
悟の手には恵子が徹の部屋でなくした下着が握られていた。