危険な忘れ物1-2
「ないなぁ」
制服に着替えた恵子はベッドの上や布団の中、果ては床の上をくまなく確認する。
「何がないの?」
そう訪ねる徹に恵子は一瞬言葉に詰まってほとほと困り果てたような顔をする。
「…パンツ」
「マジで?」
「うん。さっきから探してるんだけどないの」
「えっ、じゃあお前今ノーパンなの?」
「バカっ」
「ごめんごめん、よし俺も探してやる」
しかし恵子の下着は見つからない。
時計の針は恵子の門限にどんどん近づいている。
「おかしいなぁ、どこ行ったんだよ?」
徹も焦る。
しかしいくら探しても見つからないものは見つからないのだ。
「仕方ない。そのままじゃ帰れないだろうから俺のパンツ貸してやる」
徹は恵子に洗濯済のきれいなトランクスを手渡す。
「何も履かないよりマシだろ?制服の上からコート着ちゃえば何も分かんないよ」
「うん、ありがと」
徹の申し出に恵子も素直に頷く。
トランクスを履くとゴワゴワして落ち着かない。
まるでスカートの下にズボンを履いているような感覚だ。
「…なんか歩きづらい」
「ゼータク言うな。パンツは俺が後で探しといてやるよ」
「うん、ごめんね」
ーーー
翌日、恵子は教室に入るなり徹のもとへ向かった。
徹は恵子に気づくと満面の笑みを浮かべる。
「あ、おはよ。恵子」
「おはよ、あのさ。アレ見つかった?」
いくらセックスしている間柄とはいえ、自分の下着が彼氏の部屋にあるのは、やはり落ち着かない。
恥ずかしそうに頬を染める恵子に、徹は決まり悪く頭をかいた。
「いや、それがさ。マジで見つかんねぇの」
「ええっ!?」
「ちゃんと探したんだけどさ、なかったんだよ」
「そんなハズないでしょ!もっとちゃんと探してよ〜」
「わかった、わかった。探しとく」
「絶対だよ?」
徹に念を押すと恵子は自分の席に着いた。
「おはよー」
すぐに仲の良い女子数人が恵子のもとに集まってくる。
「朝からおアツいことで」
「あーあ、あたしも彼氏欲しいなぁ」
級友との話を曖昧に交わしながら恵子の意識は完全に下着のことから離れていた。
無くなったとはいえ、所詮彼氏の部屋なのだ。
きっとすぐ見つかる。
それなのに、恵子の思惑は外れた。
数日経っても恵子の下着は見つからなかった。