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真実のお届けモノ
【推理 推理小説】

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エピローグとプロローグ-2



加藤華子は、新宿区にある自宅に居た。
二人の子供を学校へと送り出し、同居している自分の母親と一緒に食後の散歩から帰ってきて一息ついたところだった。
華子は世話好きな性格で、困っている人を見ると放っておけないという正義感の強い女性。
彼女の父親がそういう性格だったのを、遺伝が受け継いでくれたようだ。
その父親は、もう5年前に他界してしまった。しかし、死に際を見てはいない。
ある日突然、家族や知人の前から姿を消してしまったのだ。
勿論、何故行方不明になったかも分からない。
彼は時々、散歩に行く事はあっても家族に黙って出かけることなど一度も無かった。

当時、届けを警察に提出したが深く取り合って貰えなかった。
しかし華子と母親の強い要望により・・と言えば聞こえがいいが実際はそれと同時期に発見された遺体と照合しただけで、その遺体が父親だったのだ。
発見された場所はギリギリで都内と言える自然公園の林の中。
住んでいるこの家からは遠く何百キロも離れていて、父親がそんなところに用もなく行くわけがなかった。

なのにも関わらず、警察は取り合ってくれなかった。
第一、一人の行方不明だった老人に構っている時間はハナから無かったのだろう。
場所が林というだけで事故死扱いになってしまった。
一応調べ直しを要求して証拠品と言われる遺品を今だに警察へ預けたままだが、恐らく再捜査はされていないだろうと容易に推測できる。
最初の頃は母親のことを気遣い、毎日のように警察へ電話して情報の提示を求めていたが、煮え切らない態度の警察に不信感が高まっただけで何にもならなかった。
一年も経った頃、母親が諦めを見せた。
勿論華子は納得出来なかったが、これ以上蒸し返さないでくれという母親の切実な願いを聞き入れ、警察へ電話することを辞めた。
それから4年が経った。

先日、警察から預かっていた証拠品を返したいので取りに来て欲しいという若い警官から電話が入った。
今更返されてもと言葉を濁したが、電話の内容に気づいた母親が涙ぐむ様子を見てその申し出を受けた。
だが華子は家を空けるわけにはいかなかった。
一日の半分以上を家事に費やしている上に、母親が愛する夫を失ったストレスから白内障が悪化し、失明しているのだ。目を離す訳にはいかず、電話先の警官に自宅へ送ってもらうように頼んだ。
しかし警官は少し間を置いてから自宅に届けに行くと言った。さすがにそこまでしてもらう義理が無い華子は勿論断った。それでも言葉を続けてくる警官に気持ち悪さを覚え、一方的に電話を切った。
まともに取り合ってくれなかった警察が家に来るなんて、溜まったもんじゃない。とボヤきながら。


嫌なことを思い出して、胸から吐き気を感じてテーブルに置いてある紅茶を一気に飲み干した。
静寂な空間に現れたガチャガチャというカップとソーラーの音に気付いた母親がどうかしたのかと訪ねてきた。
何でもないわ。と答えた瞬間、部屋にピンポーンという音が響いた。
まさか本当に警察が来たのかと思い、勢い良く立ち上がった。

「・・誰か来たみたいねぇ」
「お母さんはそこに居て。私が見てくるから」

そう告げると、返事も聞かずに玄関へと向かった。
警察だったらどうしてくれよう。
そんなことを考えながらドアスコープを覗いた。瞬間、目を見開いた。
ドアの向こうに居るのは二人組の整った顔立ちをした少年少女。
黒のヘッドホンを首にかけて、ネイビーカラーのパーカーとチェーンが付いているジーンズを履いているどこか日本人とは違う雰囲気をまとった黒髪の少年。
その少年の後ろに、隠れるように立っている茶髪の少女。全身をはっきり見ることは出来ないがブラウンのゆるいニットと似たような色のプリーツミニスカートを履いて大分細身なようだ。
華子は警察じゃないことに安堵しながらも、この子達が誰なのか気にしたがあまり待たせては悪いと思いドアを開けた。
ドアが開いたことに安堵したのか、ドアスコープで覗いたときより表情を柔らかくした少年が抱えている大きい箱の存在が気になった。

「あの・・何か?」

その質問に答えたのは、やはり玄関のドアを開けた華子の前に立っている日本人とは違う空気を持った少年だった。

「どーも。初めまして・・。俺達、警察に頼まれて遺品を届けにきました」

若干イントネーションがズレていて、たどたどしくはあるが外人にしては流暢な発音でそう答えた。
律儀に頭を下げられ、華子も訝わしくあるが頭を下げた。
その瞬間も、少年の後ろに立っている少女は華子をじっと見ていた。
華子が首を傾げると少年が少女を引っ張り、隣に立たせる。少女は人見知りが激しいのか膨れ面。そんな様子も気にせずに少年は口を開いた。

「俺、紫倉乃シャオと言います。」
「・・・・・紫倉乃、藍羅」

遺品を届けに来たと名乗られては、華子も無碍にすることも出来ずにどうぞと二人を家の中に入れた。
二人は、顔を見合わせてリビングに入った。

華子たちが知りたがった謎の、真実を届ける為に。




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