決着-1
ボーッと一点を見つめながら、私はモサモサとシュークリームを口に押し込むようにして咀嚼していた。
いつもなら、鈴木屋のシュークリームを食べるときは、少しずつじっくり味わいながら食べるのに、今日はどうしてもそんな気になれずにいた。
「いつまでそんな調子なんだよ」
土橋修がどっかりと私の横に座り込んで、パキッと小気味よい音を立ててお茶の入ったペットボトルの蓋を開ける。
―――あれから30分後、私と土橋修の二人は、鈴木屋のシュークリームを手にして、校門の脇に設置されている、ペンキがほとんど剥げかかったベンチに腰を下ろしていた。
土橋修が冗談で言った賭けは、私が見事に負けてしまったけれど、今口にしているシュークリームは、告白が成功して舞い上がっている大山倫平に、土橋修が自分の財布からお金を出して買いに行かせたものだった。
大山倫平がシュークリームを買いに行ってる間、土橋修は気を遣ったのかわからないけど、
「なんか飲み物買ってくる」
と、言い残して私と沙織を二人っきりにしたのだった。
二人きりになると、耳が痛くなるほど辺りが静かに感じる。
「ごめんね、ビックリしたでしょ?」
沙織の声は、静まり返った廊下にやけに響いた。
「うん、スッゴいビックリした……」
「あたし、告白された時は断るつもりだった。でも……」
沙織は、土橋修が歩いて行った方向をチラッと見た。
もちろん、アイツの姿はそこになかったけど。
「もしあたしが断ったら、修ともこのまま友達でいられなくなっちゃうかもってふと思ったの。修の性格を考えたら、あたしが大山くんと気まずくなったらきっと大山くんのためにあたしとも距離を置くだろうって。そしたら急に不安になった。……卑怯だよね。大山くんが告白してくれたのに、あたしは修との関係ばかり心配してたんだから」
「そんなこと……」
ない、とははっきり言えなかった。
嫌な奴だけど沙織に告白するため、頭を丸めてまで私に謝ってきた大山倫平の真剣な気持ちを、先ほど土橋修から聞いてしまったからかもしれない。