決着-6
「おい、お前と友達になるには申請しなきゃなんねーのかよ」
「えっ……! 違う、そんなつもりじゃな……」
なんとなく責め立てられたような気がしたから、慌てて否定をしたけど、そんな私の言葉を遮るように、土橋修は両手の平をこちらに向けてまあまあと制してきた。
「わかった、わかったよ。ちゃんと真面目に言うからさ。……石澤さん、俺と友達になって下さい」
と、神妙な顔つきになって言った。
その真剣な眼差しが私の心臓の鼓動を更に速くさせた。
何と言えばいいのか考え込んでいたけれど、
「……は、はい」
と、戸惑いながらもゆっくり頷いた。
……友達ってこんな風にしてなるもんなんだっけ?
そんな私の様子を見て土橋修は下を向いて黙っていた。
でも、やがてその大きな背中が小刻みに震えたかと思うと、ついには盛大に噴き出した。
コ、コイツ!!
その様子を見て、初めて自分がかつがれていたことを知り、私は顔が真っ赤になっていくのを感じた。
「あー、超おもしれえ! なんだ、俺告白しちゃったよ!! しかも成功したし!!」
土橋修は腹を抱えて涙目になって笑い転げている。
私は恥ずかしさが一気に押し寄せ、真っ赤になりながらも、
「ちょ、ちょっと! なんで笑うのよ!」
と、声を荒げた。
「だって、告白みてえじゃん。友達になって下さいっつって、お前はOKしたんだから」
少し落ち着いたのか、呼吸を整えながら彼は私の顔を見た。
だが、その表情は未だニヤニヤしたままだ。
「こんなの告白とは言わないでしょ! バッカみたい!!」
私は思いっきり土橋修を睨みつけてやったが、屁とも思ってないようだった。
「いやいや、俺は告白したみたいな気がしたぜ。友達になってくれって簡単な言葉だけど、何気に緊張したもん」
その意地悪い笑みがなんだか癪にさわって。
「そんなの、告白なんかじゃないもん。私には私が描いた理想のシチュエーションってのがあって、それ以外は認めてないし!」
バカにされて悔しさのあまり、思わずいたちの最後っ屁のように口からでまかせが出てしまった。
「へぇ……。じゃあその理想のシチュエーションってのを教えてくれよ。お前が認めるくらいのヤツを」
土橋修はニヤニヤしながら、私に問い詰めてくる。
多分この様子じゃ、私がでまかせを言っているのも見透かしているだろう。
私が一生懸命どう答えようか考えている時、小学生の頃に大好きだった少女漫画のワンシーンがふと脳裏をかすめた。
そして私は、ゴホッと咳払いをしてから、
「……誰もいない公園なんかで、ギュッと強く抱きしめられながら、耳元で“好きだ”って囁かれるの」
と、照れながら言った。
その漫画は、主人公の女の子と相手の男の子がお互い好きなはずなのに、様々な障害があってなかなか想いが通じない、だが最後の最後で二人はお互いの気持ちを分かち合う、と言うものであった。
今思うとありがちな内容だけど、その当時はこんな恋がしてみたいと本気で憧れたものだった。