決着-5
「一番嫌なのは、自分の性格。大山くんが謝ってくれたのにまだイライラしてるし、沙織に対して心からおめでとうなんて言えなかったし……。さっさと別れちゃえばいいのにって思ってるし……。ホント、私って最低……」
泣きたくないのに声が震えて、目がジワリと涙で滲んで視界がぼやけてくる。
それでも私は泣いてるとは思われたくなくて、下を向いて半分以上あったシュークリームを一気に口に押し込んだ。
私の話を黙って聞いていた土橋修は、またお茶をグイッと飲み、視線を私が零したクリームに落としながら、
「沙織がさ、」
と話し始めた。
「電話で倫平のことを相談してきた時があったんだ。まあ、相談って言っても俺としては倫平を応援してたから、話を聞いてるだけだったんだけどな。まあ俺がそんな調子だから、あいつも相談しても埒があかないと思ったんだろうな。だったら電話を切ればいいのに、今度は友達の話とかテレビの話とか出してきて、ダラダラ喋ってんだよ。女ってなんでこんなに長話すんだって思ってた。くだらない話でも楽しそうに話してんだ」
その時のことを思い出しているのか、彼は鼻の下を擦って小さく笑う。
私は、電話の相手があんただから嬉しかったんだよ、と言いかけて黙った。
「それでな、沙織の話には必ずお前の話題が出て来るんだ。お前のこと楽しそうに話しては、“修も桃子と友達になればいいのに”って口癖のように言ってた」
私は俯いたまま、瞳を少しだけ見開いた。
先ほどの沙織の笑顔が浮かんで、目の奥がジワッと痛くなる。
……沙織。
「お前は沙織にとって大事な友達なんだよ。それは変わらねえだろ? だから倫平が沙織を取ったなんて悪く捉えないで、あまり考え過ぎるなよ」
「…………」
土橋修の言っていることは正論だし頭ではわかっている。
でも、感情がついていけなくてバランスを崩しそうなのに、そんな説教じみたことを言われても、今の自分にはとても素直に受け入れることができなかった。
だって、大好きな友達が大嫌いな男と付き合っちゃったんだから。
「最初はキツいかもしれないけどな。まあ、どうしても淋しくなったら沙織の替わりに俺が遊んでやるからさ」
「……変に気を遣わなくていいよ」
私は、吐き捨てるように地面を睨みつけながら言った。
「遠慮すんなって。俺達友達だろ?」
彼の言葉に目を見開いて顔をあげる。
「……友達?」
「あれ、俺の勘違いか?」
彼は、おかしいなと言わんばかりに顎に手をあてている。
「だって……いつから……?」
次第に動悸が激しくなり、ゆっくり土橋修の顔を見やったら、彼は少し困った顔で苦笑いをしていた。