決着-3
付き合うことになったと知らされてから、なぜか焦燥感が押し寄せ、お腹がチクチクと鈍く痛む。
沙織が出した答えに友達として祝福すべきなのに、なぜか沙織が遠くに行ってしまうような不安や、沙織を奪った大山倫平に対して八つ当たりのような理不尽な怒りばかりがこみ上げて、膝がガクガクと小さく震えていた。
しかし、沙織はそんな私の様子に気付かず、赤らめた顔のまま唇に手を触れたりしている。
私はやっと重い口を開き、
「……沙織、おめでとう」
と、教科書を朗読するような抑揚のない口調で、顔を引きつらせながら言った。
私の心にもない祝辞にもかかわらず、沙織は嬉しそうな顔で、
「ありがとう、桃子」
と言った。
それから間もなくして、
「おう、飲み物適当に買ってきたぞ」
と、のほほんとした雰囲気を漂わせながら、ペットボトルを四本両腕に抱えた土橋修がこちらに歩いてきた。
何も知らない呑気な様子が癪に障ったけど、彼の登場により少し空気が和らいだような気がした。
「修のおごり?」
沙織も土橋修が来てホッとしたようで、彼からミルクティーを受け取るとすっかりいつもの調子に戻り、笑いながら言った。
「いいや、後で倫平に請求してやる。お膳立てしてやったんだからこんくらいいいだろ」
「……セコ」
私がボソッと呟くとすかさず土橋修は、
「倫平に買いに行かせたシュークリーム代はお前に後で払わせるからな。賭けは俺の勝ちなんだから」
と、意地悪く笑いながらペットボトルのお茶を私に放り投げた。
「はあ? 何言ってんの? 私は賭けなんてするつもりなかったんだし、勝手に決めないでよ」
なんとかペットボトルをキャッチできた私は、声を甲高くして彼を睨みつけた。
なのに、土橋修は舌を出してにやついているだけ。
何この憎たらしい顔は。
ムカッときた私はプイッとそっぽを向いた。
沙織は、そんな私を見てなぜか嬉しそうに微笑んでいる。
「まあまあ、一応沙織にもめでたいことなんだから、これくらい祝ってやれよ」
「だから、何でそれをあんたが仕切るのよ」
口ではそう悪態を吐いたけど、沙織の笑顔を見ていたら次第に私もなんだかそれでもいいような気になってきた。