決着-2
「短い時間の中で、あたしはいろいろ考えて、修と友達でいられることを最優先にした。ちょっと付き合って、大山くんがあたしの嫌な所いっぱい知って、彼の方から気持ちが離れていけばいいって思った。だから、あたしは告白を受けた」
沙織は、私から目を逸らして気まずそうに下唇を噛んでいる。
多分、私に軽蔑されるのでは、と不安になっていたのかもしれない。
「ごめん。大山くんと付き合ったらきっと桃子は嫌な気持ちになると思ったけど……それでも、あたしは修と友達でいたかったの。そんな自分のことばかりでひどいこと考えてたのに、大山くんはスッゴい喜んでてね。あたしは、まともに大山くんの顔が見れなかった。そしたら……」
突然沙織が顔を赤らめてモジモジし始めた。
私は、やけに心臓が高鳴るのを感じていた。
沙織はやけに言いづらそうに、口に手を当てたりしていたけれど、やがて、
「いきなり……キス……された」
と、恥ずかしそうに俯きながら言った。
「えぇ!?」
私は、とっさに大きな声が出てしまい、慌てて口に手をあてて閑散とした廊下を見渡した。
「あたし……びっくりして大山くんの顔見たら、彼……顔真っ赤にして“オレが修の事忘れさせるから”って言ったの」
言葉が出なかった。 大山倫平が、沙織の気持ちをすべて見抜いていたなんて。
土橋修と友達でいたいと言っていた沙織の気持ちは、彼に対する恋心だったなんて。
それを今初めて気付かされた自分の鈍感ぶり。
ずっと一緒にいた私よりも、大山倫平がずっと沙織のことを理解していた、その事実がやけに私の嫉妬心を煽った。
「大山くん、“だてにずっと沙織ちゃんのこと好きでいたわけじゃない”って、得意気に笑ったの。耳まで赤くして。その姿見てたら、気持ちに応えてあげたいって気持ちが湧き上がってきた。……時間はかかるかもしれないけど、大山くんとなら、自分の気持ちに決着がつけられるような気がしたし、やっと一歩前に進めそうな気がする」
「そっか……」
大山倫平に対して苛立ちに似た感情を抑えながら、私はやっとそれだけ言えた。