ハートのクイーン-16
「大好き。
初めて会った時からずっと好き」
そう言ったあたしをびっくりするような目で見つめる。
「ナオ。人間ってさ?
いろいろ恋をして恋愛をして
良いも悪いも、恋愛に対して手札が増えていくんだよ」
「手札?」
「そう。こういう時にはこのカード。
こういう時にはこのカードを切ればいいって、賢くなってくる」
「ふ〜ん」
「ナオはさ。もうオレとしか恋愛しないから
手札を増やす必要はねーから。
ほかの男に切らないように全部カードよこせ」
「ヒロくんは今まで散々切ってきたのに?」
今まで散々お兄ちゃんから聞かされてきた
ヒロくんの歴代の恋愛経験を思い出しながら
意地悪な気持ちとヤキモチがムクムクと湧いてきた。
「安心しろ。ハートのエースを切るのは・・・
ナオ。お前が最初で最後だ」
ニヤっと笑ったその顔はあたしの大好きなヒロくんだった。