悪友タイム-5
三つのコップにパイナップルジュースが真雪の手によって注がれた。「なんだ、まだ龍は話してなかったんだ、この親友の二人に。」
「まったく、水くさいったらありゃしねえ。」ひろしが言った。
「見損なったぞ。いや、逆か。見直したぞ、龍。」
「何だよ、それ。」
「おまえが普通のスケベな男子中学生だったってことだよ。」
「スケベ度、想像以上だったけどな。」
「ほっとけ!」
「おかしいと思ってたんだ。」
「何がだよ。」
「いや、俺たちの水泳部、けっこう可愛いやつも多いし、ナイスバディだし、水着だし。俺たちがあれこれ品定めしてても龍、あんまり絡んでこなかったからな。」
「こんな彼女がいたんじゃなー。」
「絶対勝てねえよなー、女子中学生じゃ。相手にならねえ。」
「なんで黙ってたんだよ、龍。」
「だ、だって、恥ずかしいじゃないか。」龍は真雪の横に縮こまっている。
「そうやって真雪さんと並んでっと、彼氏っつーより、まるで弟みてえだな。かっかっか!」ひろしが笑った。
「俺たちがおまえをからかうとでも思ってたのか?」
「思いっきり思ってた。ってか、今も思ってる。」龍は赤い顔を上げて反抗的に言った。「言いふらしたらただじゃおかないからな。」
「そんなことしねえよ。」
「俺たちを信じろ。」
「大丈夫だよ。」真雪が言った。「二人ならちゃんと大事なことは秘密にしてくれるよ。龍の親友でしょ?」
「どこまでなら許せる?」たけしが龍に訊いた。
「ど、どこまでって?」
「いや、公表していいのは、どの程度か、って訊いてるんだよ。」
「やみくもに公表するな。」
「わかってるって。」たけしがグラスを持ち上げた。「龍の彼女はいとこの真雪さんだ、っていうことだけだな、口走るとしても。」
「そうだな。」ひろしもグラスに口をつけた。
「そ、それ以上は絶対に言うなよ!」
「言わねえよ。訊かれても『本人に訊け』って言うから心配すんな。」
「絶対だぞ!誓えよ!」
「だけど、俺たちも卒業するわけだし、近いうちに公表してもいいんじゃね?おまえの口から。」
「なんて?」
「いとこの真雪さんと、すでに中二の頃からカラダを求め合った深い仲だって。」
真雪はそんな三人のやりとりをにこにこしながら聞いていた。
龍は一つため息をついて言った。「自分からそんなことまで公表しないよ。面白半分に話題にされるのはごめんだ。」
「ま、そうだろうな。でも、いいなー、龍。」
「だよな。いつでも好きな時にエッチできるんだからな。しかもこんな巨乳の彼女と・・・。」
「いやらしい言い方するなっ!」龍が言った。
「わりいわりい。」
「俺たちが、このことを秘密にする代わりに、」たけしが龍に顔を近づけて言った。
「な、何だよ。」
「おまえと真雪さんが今夜何をしたか、来週詳しく聞かせろ。」
「なっ!」
「さもないと、」ひろしも言った。「俺たち、クラスで言いふらしちまうぞ。何もかも。卒業記念に。」
「お、おまえらっ!」龍はまた焦りながら真っ赤になっていた。
「俺たち三人の秘密。そうだろ?龍。」たけしが龍の肩を笑いながら軽く叩いて立ち上がった。「よし、ひろし、帰るぞ。これ、いただき。」そしてスルメを口にくわえた。
「そうだな。」ひろしも雑誌を手に立ち上がった。「むなしいなー、俺たち、まだこんなんでヌくしかねーんだからな。」そしてじっとその表紙を見つめた。
ふっとため息をついてたけしが言った。「だよな。」そしてにこにこしながら真雪を見た。「お邪魔しました、真雪さん。」
ひろしも笑顔で言った。「龍とごゆっくり。」
「また来てね、二人とも。」
真雪と龍は玄関先で二人を見送った。
「ごめんね、二人とも、気を遣わせちゃって。」真雪が言った。
「なかなか有意義で、刺激的で、楽しくて爽やかなひとときだったな、ひろし。」
「だな。」ひろしは龍に顔を向けた。「じゃあな、龍、楽しみにしてっから。」
「今夜は特に濃厚にな。」
「とっとと帰れっ!」龍は叫んだ。
たけしとひろしは笑いながら自転車にまたがって颯爽と走り去っていった。
※本作品の著作権はS.Simpsonにあります。無断での転載、転用、複製を固く禁止します。
※Copyright © Secret Simpson 2013 all rights reserved