悪友タイム-4
「さあ、龍、聞かせてもらおうか。」たけしが静かに言った。
「そうだ。真相を聞かせろ。俺たちが納得するように。」ひろしも言った。
龍は真っ赤になって、二人の顔を落ち着かないように交互に見た。「ひ、一人でやるときに使ってるんだ・・・。」
「なんでわざわざコンドーム使う?」たけしが言った。「何の意味があんだよ。」
「俺もティッシュで十分だが。」ひろしも言った。
「や、やっぱりさ、先々実際に使うことを考えると、い、今のうちから慣れといた方がいいだろ?」
「先々?近々誰かとそんなことする予定、あんのか?」
「やっぱ、彼女、いるんじゃね?」
「しかもカラダの関係・・・・。」
「ちっ、違うよっ!」
「おまえ、自分で買ってるのか?それ。」
「そ、そうだけど・・・・。」
「相当なエロだったんだな、龍って。知らなかった。」
「すでに俺たちの手の届かないところにいやがったのか・・・。」
「恥ずかしくないのかよ、買う時。」
「恥ずかしいに決まってるだろ。でも必要なんだ。」
「必要?恥ずかしいけど必要?そんな恥ずかしい思いをして、しかも小遣いをはたいて買うほど必要だってか?」
「そうか!」たけしが手を叩いた。「忘れてた。」
「どうした?たけし。」
「重要な場所を調べるのを忘れてた。」たけしはそう言うと、ベッド脇のゴミ箱をあさり始めた。
「たけしっ!お、おまえ、何やってる?!」龍はまた慌てふためいた。
ゴミ箱には丸まったティッシュがたくさん入っていた。
「やっぱりだ。」たけしはそのうちの一つを取り出した。「何かが包まれている。」
「使用済みコンドーム?」ひろしがたけしに身を寄せた。
「や、やめろっ!」龍は二人につかみかかった。ひろしはとっさに龍を羽交い締めにした。
「大正解!百万円!」たけしが言った。「すげえ・・・・・・・・龍、おまえいっぱい出すのな。」
「そんなに?」ひろしが言った。龍はもがいている。
「この量、ハンパないぜ。口が結んであって、水風船みたいにふくらんでる。」たけしが続けた。「でも、包んでいるティッシュが張り付いててはがれない。」
「張り付いて?」ひろしが言った。「どういうこった?」
「つまり、」たけしが手にぶら下げていたそれをゴミ箱にぽいと投げ入れて言った。「コンドームの外側も濡れた状態だった、ってことだよな。」
「そっ、そっ、それは・・・・。」もはや龍の焦りは最高潮に達していた。
その時、部屋のドアがノックされた。「龍、開けるよ。」それは真雪の声だった。
「ま、真雪・・・姉ちゃん・・・。」龍の身体から力が抜けていった。「な、なんでこのタイミング・・・・。」
「いいっすよー。」ひろしが、力尽きて床に倒れ込んだ龍から手を離して言った。
「いらっしゃい、ひろし君、たけし君。」真雪がドアを後ろ手に閉めながら、笑顔を二人に向けた。「遊びに来てたんだね。」
「お邪魔してます。真雪さん。」たけしが顔を上げて言った。
「どうしたの?龍。」真雪が床に倒れている龍を見下ろして言った。「何かあったの?」そして彼女はベッドに脱ぎ捨てられていた龍の制服の上着を、手慣れた様子でハンガーに掛け、軽く埃を払って壁に吊した。
「・・・・・・。」たけしもひろしもその真雪の行動をじっと目で追った。「極めて自然に・・・・。」「まるで世話女房・・・。」
真雪はガラスのテーブルに向かって腰を下ろし、両手でほおづえをついた。「何の話、してたの?三人で。」
くんくん・・・。たけしは鼻を鳴らした。「これか、この匂い・・・・。」
「どうした、たけし。」ひろしが訊いた。
「この部屋の匂いの元は真雪さんだ。チョコの匂いがする。」
「・・・・ということは・・・・。」
「もうだめだ・・・・。」龍はうつ伏せに伸びたまま、聞こえるか聞こえないかぐらいの小さな声で呟いた。
「何?どうかしたの?ひろし君。」真雪が言った。
ひろしは真雪に向き直った。「真雪さん、質問してもいいっすか?」
むくっ!龍が起きあがった。「お、おまえ、何言い出すんだ?」
「はいどうぞ。」真雪がにこにこして言った。
「パイナップルジュースは好きっすか?」
「あたしが一番好きなジュースだよ、パイナップルジュース。なんで知ってるの?」
「やっぱり、」たけしはひろしに囁いた。「やっぱりな。」ひろしも返した。
「もう一つ質問してもいいっすか?」
「はいどうぞ。」
「ほしのあみと真雪さん、どっちが胸、大きいんすか?」
「なにそれ。」真雪は笑った。そして床に置いてあった雑誌を手に取った。「ほしのあみ、これだね。」
「真雪さんの胸も大きいっすよね。」
たけしが言った。「触った感じ、どうなんですか?」
「ほしのあみのバストがどうかは知らないけどね。そんなことは触ってみなきゃわかんないでしょ?触ってみる?ひろし君。」
「え?い、いいんすか?」
「だめだっ!」龍がいきなり大声を出して真雪の肩を抱き寄せた。
「はい、終了!」たけしが満面の笑みで言った。「もう隠し通せませんぜ、龍のだんな。」
「やっと白状しやがった。」ひろしも腕組みをして言った。「あーすっきりした。」
ひろしとたけしは向かい合って派手にハイタッチし合った。「お疲れっしたーっ!」
「まさか、いとこのねえちゃんが彼女だったとは。」
「盲点だったな。」