悪友タイム-2
「そうそう、今週発売の雑誌、出せよ、ひろし。」たけしがにやりとして言った。
「雑誌って・・・。ひろし、学校にそんなの、朝から持っていってたのか?」龍が訊いた。
「ああ、こっそりな。」
「学校で読むほどのものか?『少年チャンプ』。」
「だれが少年チャンプっつった。」
「え?だって、おまえがいつも買ってるのって・・・・。」
ひろしは通学バッグを開けて、紙袋を取り出した。「それに週刊じゃねえ、月刊だ。」
ひろしからそれを受け取ったたけしが焦ったように袋から雑誌を取り出した。水着姿の女性の大きな写真が表紙を飾っていた。
「なっ!」龍は大声を出した。「なんだ、それ?」
「純情でお子ちゃまな龍には刺激が強すぎるってか?」たけしがにやにやしながらその表紙を見せびらかした。
「今月の特集はほしのあみなんだぜ。」ひろしが楽しそうに言った。「俺、ファンなんだ。このでっかいちちがたまんねえよ。」
「ほ、ほしのあみ?」龍は赤面した。
「ほれほれ!」ひろしがそのページを開けて龍の顔に近づけた。
「どうだ?鼻血出すなよ、龍。」
龍はその大きなバストのほしのあみが黄色い水着姿で微笑んでいる写真のページを右手で押しやって言った。「べ、別に、こんなの見ても、何ともないね。」
「嘘つけ。」たけしが言った。「もし、こんな写真に興味がないってんなら、おまえは病気だ。」
「そうだそうだ。」ひろしも言った。「男子中学生がこのテのものに興味を示さねえはずがねえ。」
「だって、ほしのあみの胸、触れないじゃないか。」龍がぼそっと言ったその言葉に、たけしもひろしも凍り付いた。「な、何だって?」
しばしの張り詰めた沈黙の後、ひろしはその雑誌を静かに床に置き、龍の顔をしげしげとのぞき込みながら震える声で言った。「りゅ、龍、お、おまえの口から、そんな言葉が出てくるなんて・・・・。」
たけしも言った。「『胸に触れない』?な、何だよその意味深な発言・・・・。」
「な、なんだよ。い、一般論だ。女の人のバストって、見てるより触る方がいいだろ?おまえらだって。」
「何かある・・・・・。」たけしが腕組みをして目を閉じた。
「今までのおまえの言動を総合すっと、」ひろしが静かに口を開いた。「おまえにゃ実はもうつき合ってる彼女がいて、この部屋を掃除してくれたり、おまえに胸を触らせたりしてくれてる。そうなんだな?龍。」
「しかも、その女はほしのあみを上回る巨乳の持ち主・・・。」
「ばっ!ばかなこと言うな!そ、そんな彼女なんているわけないだろっ!」
「無駄に大声出してやがるし・・・・。」たけしも静かに言った。
「そう言えば、この部屋、女のコっぽい匂いがすんな。何つーか、チョコレートみたいな甘い・・・。そう思わねえか?たけし。」
「うん。俺もそう思ってた。少なくとも男の部屋の匂いじゃない。」
「龍・・・・純情で、奥手なやつだと思ってたが・・・・。」憐れむような目でひろしが龍を見た。「おまえもただのエロ男子中学生だったか・・・。」
「誰だ?龍、白状しろっ!」たけしが叫んだ。
龍はだらだらと冷や汗をかき始めた。
「麗子、奈津実、亜紀、」たけしは指を折りながらつぶやいた。「水泳部で巨乳っつったら、この三人。」
「おまえ、あいつらの水着姿に熱い視線、送ってたんだな?ってか、このうちの誰かとつき合ってんだろ?」
「違うね。」
「おっと、即答。」
「しかも自信たっぷり。」
「もういいだろ!おとなしくその雑誌見てろよ。俺のことなんかほっといてくれ。」