投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

「月光」
【その他 官能小説】

「月光」の最初へ 「月光」 0 「月光」 2 「月光」の最後へ

「月光」-1

うつ伏せで、ブランケットにくるまる彼女が、身を起こした。窓から差し込む月の光が、素肌に降り注いでいる。
裸の躰を無防備に晒して、彼女は窓に近づくと、月を仰いだ。
光が彼女を浮かび上がらせて、闇と光の境目がにじんでぼやけた。俺は何度か瞬きをして、その光景をただじっと眺めていた。
幻想的な風景。
彼女が窓を開けて、闇の空気を取り入れる。音も無く風が吹き、彼女の髪を揺らした。
冷気が、窓から部屋に忍び込む。
俺はベッドから起き上がり、ブランケットを掴むと、それで彼女を包んだ。案の定、彼女の躰は冷たくて、後ろから強く抱き締める。
「風邪をひくよ」
そう呟いて、彼女の小さな耳に唇を寄せる。緩やかな曲線を描く、その耳にも月の光が輝いていて、暫くの間みとれていた。
「…怖い」
彼女の声で我に返った俺は、その言葉に隠された意味を考えた。
「怖い?」
寄りかかるようにして、俺にもたれる彼女は、月を見ていた。
ゆっくりと振り返る彼女の腕が、俺の首に回された。ブランケットが落ち、素肌が触れ合う。まだ、冷たい。
「抱いて」
囁く彼女の唇に、そっとくちづけた。


シーツに沈む、彼女の躰。乱れた吐息が俺の肌にかかって、その場所から熱くなる。
柔らかな躰に唇を這わすと、その度に、彼女は震えた。
繋がった場所から、水音が響く。その音を聞かせるように、ゆっくりと腰を動かすと、彼女は甘い叫びをあげた。
紅潮した頬に手を伸ばし、俺に向かせる。
「俺を見て」
声に、彼女が瞳を向ける。潤んだその瞳に更に欲情して、俺は腰を進めた。彼女が躰を引き攣らせる。
開け放たれた窓から、風が吹いている。時間をかけて移動した月の光が、ベッドに差し込んで二人を照らした。彼女の顔にも。
熱い息を吐く彼女の頬に、光が反射する。白く輝く彼女の躰が、何処か現実から離れていきそうで、俺は強く彼女の指を、指で絡めた。連れて行かれそうで。
『…怖い』
彼女の声。空を仰ぐ。
満月が、俺達を見ていた。

〈了〉


「月光」の最初へ 「月光」 0 「月光」 2 「月光」の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前