憲=サンタクロース?-2
……あれ?
掴んだはずのしょうが焼きが動かない……。
視線をテレビからしょうが焼きに移し、そこからもう一組の箸へと見て………って、だぁ!?
視線の最終到達地点には、白雪の顔……。
同じしょうが焼きを掴んでたのか……。
思わず、しょうが焼きを離すと、ほぼ同時に白雪も離した。しょうが焼きは哀れにも宙を舞って、フライドチキンの皿にダイブした。
は、恥ずかしい……。顔から火が吹き出そうだ。
白雪も顔を真っ赤にして、うつむいた。
「あ、あ〜、そういや孝之とお母さんは?」
微妙に気まずいと言うか恥ずかしいと言う感じの空気を打開すべく、口を開いた。
「あ、あぁ、母さんはパーティに出かけて、孝之はデート」
で、デート………。うぇ、嫌な想像してしまった……。
「デートねぇ……」
「それがなぁ……」
白雪がさっきの表情とはうって変わって、悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「デートの相手がな」
白雪の話を聞きながら、わかめの味噌汁に手をつける。はぁ、美味い。
「麻衣なんだよ」
ぐっ……ごほっ!!
「な、なんだって?だ、だって孝之は独狙いだったんだろ!?だいたい独が白木さんを狙ってたんじゃ……いや、これが孝之の作戦か?」
白木さんに相手がいると錯覚させて、利を得ようとする孝之の作戦か!?
「いや、それがさぁ、アタシ聞いたことあるんだよね。孝之が寝言で『麻衣…』って言ってたの」
……ややこしくなってきたなぁ。このまま行ったら、同姓愛者同士のなんとも奇妙なカップルが成立するやも……。
「まぁ、麻衣も小学校の時から孝之とも仲良かったからね。もしかしたら、お互い実は……ってことも」
白雪は、ニシシ、と言った感じの笑みを浮かべた。他人の色恋沙汰に興味を示すとは、やっぱり白雪も女の子だな。
それにしても、そうなると、独が哀れだ。……まぁ、いっか。
どうせ独だし。他人の不幸は蜜の味と言うしな。せいぜいネタを提供してくれたまえ。
そんなことを考えつつ、俺はわかめ味噌汁を飲み干すのだった。