本気-1
それから、しばらくは平穏過ぎる日々が続いていた。
土橋修は、彼らのたまり場であった廊下から、奴のクラスへ場所を変えてワイワイ騒いでいるらしく、あれからまともに顔を合わせたことは一度もなかったし。
下校時に遠目に彼の姿を見かけることはあっても、いつも友達と盛り上がっているようで私に気付くことはなかった。
大山倫平は明らかに沙織を避けているらしく、学校に来ているらしいものの、その姿を見かけることはまずなくて。
沙織は私に、土橋修と友達になればいいとは言ったものの、それを無理強いさせることは決してなく 、あの二人の話題を口にすることも特になく今まで通りに過ごしていた。
郁美からの連絡は最後に公園で会って以来、ない。
土橋修と話ができたのか気にはなっていたけど、自分から連絡をとるのはなんとなく気が引けて、そのままになっていた。
そんな感じで過ごしていたある日の放課後。
その日最後の授業が終わると、みんなはバタバタと帰り支度を整えたり、部活へといそいそと向かったりしてざわついていた。
「桃子〜、帰ろ! あっ、帰りにコンビニ寄りたい」
「オッケー」
一足先に帰り支度を済ませた沙織が、私の席に駆け寄ってくる。
それに合わせて教科書やノートをカバンに詰め込んで、ガタンと席を立ち上がる。
私達はクラスの女子に手を振り、「じゃあね〜」と挨拶をして教室を出た。
いつも通りの放課後の風景。
コンビニ寄ったら本屋さんにも付き合ってもらおうかな。
そんなことを考えながら、くだらない話で沙織と笑い合う。
だけど次の瞬間、私の顔は緊張で強張り、息を飲んで固まってしまった。