本気-6
鈴木屋とは、学校の近くにある田舎にしてはやけにこじゃれたケーキ屋のことで、ここのシュークリームは値段の割にボリュームがあって味もよいので、人気があった。
「ってか、ひどくない!? 友達の告白の結果を賭けのネタにするなんて!」
「黙ってりゃバレねーだろ」
「しかもシュークリームって、男のくせに……」
「俺さ、甘いもん大好きなんだよ。特にあそこのシュークリーム美味いんだ」
私の呆れる顔をよそに、土橋修は街のケーキ屋について熱く語り始めた。
チラリと鏡に視線を移すと、無邪気な顔で一生懸命話をしている土橋修の姿があって。
私は鏡越しに彼の姿をチラチラ見ては、なぜか一人で勝手に顔を赤くしていた。
しばらくしてガラガラと、少し遠くで引き戸が開けられた音がしたので、私達は先程の空き教室の方へと歩いて行った。
やはりさっきの戸の開く音は沙織達で、先に大山倫平が空き教室から出て来る所。
大山倫平が私達の姿を見つけると、少し足早に向かってきた。
沙織はそのすぐ後ろをついて来たけど、俯いていたので表情は読み取れなかった。
二人が私達の前にやって来ると、大山倫平は無表情で立ち尽くしてしばらく黙っていたが、やがてみるみるうちに口元をだらしなく緩ませてきて、少し後ろで下を向いて立っていた沙織の手をギュッと握り、
「オレ達、付き合うことになりました!」
と、底抜けに明るい声で報告してきた。
私は唖然としてしまい、土橋修もポカンと口を開けていた。
「沙織、ホント……?」
私が恐る恐る尋ねると、沙織は真っ赤な顔をして、
「うん……」
とだけ答えるのだった。