本気-4
「石澤さん、この間は失礼な事ばかり言ってすみませんでした」
「は……?」
何言ってんの、この人。
私はポカンと口を開けたまま土橋修の顔を見ると。
彼は黙って、親指で大山倫平の方を指差して話を聞くよう促していた。
「恥ずかしながらオレは、自分の言ったことがひどいって気付かなかったんだ。沙織ちゃんに怒られ、修にも後から注意されて、初めて自分のしたことがどれだけ失礼なのかわかった。今さらだけど、とにかく謝らせて欲しい。……石澤さん、悪かった」
そう言うと大山倫平はもう一度深く頭を下げた。
私は青々とした大山倫平の後頭部を見ながら、オロオロするだけだった。
正直、あの一件があってから私は大山倫平が大っ嫌いになっていたけど、誠意のつもりで丸めたらしい頭を見ると少しだけ心が揺らいだ。
「もう、いいです。わかりましたから」
だからといって、全てを許せるほど私は心が広くないし、嫌いなことには変わりはないので、素っ気なくそう言い放った。
「ありがとう」
それでも大山倫平は少し安心した様子で顔を上げた。
そして、彼は土橋修の方を向くと何かを訴えるように頷いた。
すると、土橋修は私の右腕をガシッと掴んで、
「ちょっと来い」
と、沙織と大山倫平を残して、ズンズン引きずるようにして空き教室から連れ出した。
「あっ、桃子!」
驚いたような沙織の声が私の背中に向けられたけど、土橋修はそれを無視してさらにズカズカと廊下を歩き出した。