本気-3
「急に呼び出して悪かったな」
空き教室に入ると、土橋修は私達の方に向き直り、小さく頭を下げた。
「それはいいんだけど、どうしたの? いきなり」
沙織が怪訝そうな顔をして彼を見つめる。
沙織だけが呼び出されるなら、もしかしたら土橋修が沙織に告白……というシチュエーションも想像できるのに、どうみても邪魔者でしかない私まで一緒に、と言うのはなぜだろうか。
一緒に呼び出されたとは言え、自分は部外者な感じがして、居心地悪そうに薄汚れた自分の上履きをボーっと見つめていた。
その時、背後でガラガラと戸が開いた音がしたので、私は顔をあげて入り口を見た。
そして入って来た人物を見た瞬間、目を見開いたまま固まってしまったのである。
「え……?」
沙織もまた、少しだけ開いた口に手を当てて固まり、教室に入ってきた人物を見つめていた。
入り口の前で立っていたのは、大山倫平だった。
私達がしばらく固まって彼の姿を凝視していたのは、彼がなぜか頭をすがすがしいくらい丸めていたから。
大山倫平は、ゆっくり私たちの前に歩み寄ってきて、キュッと唇を噛みしめたまま俯き加減で黙り込んでいる。
彼の以前の髪型は、ベリーショートに軽くパーマをかけていて、テレビや雑誌でよく見るようなお洒落な髪型で。
もちろん、カラーもこだわっていたみたいで赤みがかった少し明るめの茶髪であった。
それが、今目の前に立っているのは、野球部でもしないような5厘刈りで、今までのイメージがすっかり無くなってしまった大山倫平の姿だった。
「倫平」
土橋修が静かに言うと、大山倫平は意を決したように私の顔を見て深々と頭を下げた。