加害者-2
「…ねえ」
「ん?」
事を終えて少しうとうとしていた早坂さんは私の声でこちらを向く。
「なんかさ、私たち、セックスしかしてない気がするんだよね…」
ずっと気にしていた事を言ってみた。
「…ん、まあそうかもな」
「なんか、付き合う前と変わらないというか…」
「んんー」
眠いせいか、面倒くさそうに早坂さんは答える。
「なんかさ、連休とれたら、どっか行かない?」
「…いいよ。」
「どこか行きたい所とか、ある?」
「…ない」
「…」
「…で、りっちゃんの行きたい所とか言ったの?」
ユウトさんは私の淹れたコーヒーをベットに腰をかけてゆっくり飲んでいる。
「…言わなかった。」
「え、なんで?」
「…行きたいところ、ない。…てか、旅行とか好きじゃない。」
「え、なにそれ。」
「取り合えず、旅行とか恋人っぽいかなーって思って…」
ユウトさんは苦笑する。
「なんで旅行好きじゃないの?俺暇さえあればあちこち行くけど。」
「だってさ、旅行行ったら、遭わなくていいトラブルに遭ったりするかもしれないじゃん。
自分からトラブルに向かっていくなんて、馬鹿みたいだもん。」
「…。
いや、でもさ、そういうトラブルを一緒に乗り越えると、絆が深まったり、相手の新しい一面が見えるもんでしょ?」
「みんな、そんな事を目指して旅行するの?難儀だねー」
「…なんていうか、りっちゃんて友達いないの分かる気がする。」
ユウトさんはさらっとそんな事を言って、コーヒーを飲み続けた。
私は、少し不貞腐れながら、健全な考えを持つ、ユウトさんとか旅行が好きな世の中の人を羨ましく思った。