赤い眼-1
優しく優しく頭を撫でられている感触に、カリーはゆっくりと目を開ける。
頭を撫でているのは言わずと知れたスラン。
どうやら彼の脚を枕にしているようだ。
「お、気づいたか」
「……朝ぁ?」
「いや、まだ夜中」
スランは右手でカリーを撫で続け、左手には酒の入ったグラスを持っていた。
ぽやんとしたままその様子を眺めているカリーの頭が徐々にクリアーになっていく。
「あ!!中っ?!」
意識がハッキリした途端、カリーはガバッと身体を起こして自分の秘部に指を挿れた。
「うわっ下品」
そうツッコミつつスランはやっぱりな、と思う。
カリーが身体の表面に塗ったのは揮発性の毒。
30分ぐらいで蒸発して無毒になるタイプだ。
その証拠にカリーは躊躇無く自分の秘部に指を挿れている。
「誰のせいよぅっ!」
振り向いて文句を言うとスランは可笑しそうに喉を鳴らして笑っていた。
「……出…してない?」
「ちゃんと抜いた」
スランの答えを聞いたカリーは、自分に指を突っ込んだまま安堵のため息をつく。
「だから、下品だって」
いつまで指を突っ込んでいるんだ、とスランはカリーの手を掴んでそれを引き抜き、指に付いている液体をペロンと舐め取った。
「ど、どっちが下品よぅ」
「これは卑猥って言うの」
スランは綺麗に舐めた指を口に含んでちゅぽんと吸いあげて手を離す。
「あぁ…そう……って、ああっ?!痣になってるぅ〜」
カリーは自分の手首にくっきり付いた紐の跡を見て悲鳴の様な声をあげた。
「いちいち騒がしい奴だな。因果応報って言ったろ?お前が素直に抱かれてりゃ縛ったりしねぇっつうの」
スランは知らん顔で酒をあおる。
「うう……ゼインにツッコまれたらどぉしよぅ〜…」
カリーの口から出た名前にスランはピクリと反応した。
グラスに口を付けたまま目だけでカリーを見ると、彼女はふにゃっと泣きそうな顔になっている。
(これが赤眼のカリオペねぇ……)
暗殺集団シグナーは金持ち相手の集団で、顧客にあちこちの国がいる程のエリート集団。
その中でも有名だった『赤眼のカリオペ』が実はこんな女の子だとは……誰が想像しただろうか?
どう見たってキャピキャピした頭の悪い女だ。
スランは一番始めに彼女の身のこなしや戦いぶりを体感しているので分かったが、自分が同じ立場の人間じゃなかったら絶対に気づかない。