赤い眼-3
(もうちょっとでイケたのにぃ〜!!)
肉体的な絶頂じゃなくて精神的なエクスタシー……カリオペにとって至福の時なのに邪魔された。
カリオペは天井裏で息を殺しつつ、邪魔者を待つ。
部屋に入って来たのはカリオペと同じぐらい……13歳かそこらの少年。
灰色の髪に蒼い目、締まった筋肉のついた左腕の上辺りに奴隷の焼き印が押されていた。
(……今夜のお相手かぁ……)
ターゲットはホモでショタだ。
奴隷市場で買ったであろうその少年は、ベットの上で肉塊になりかけている中年男に気づいて一瞬足を止めた後、ゆっくりと近づく。
中年男の悲惨な姿を見た少年は、無表情でその男の首に手を当てた。
深い傷はつけていない……手でちょっと押さえたら止血できる範囲のもの。
カリオペは内心舌打ちして短剣を握った。
こうなったら、この奴隷も始末しなければならない。
仕事の失敗は許されないのだ。
カリオペが天井裏から出ようとした時、何かがおかしいのに気付いた。
(止血してるワケじゃない?)
ベットの赤い染みは未だにゆるゆると広がっている。
止血してたら染みの広がりはもう少し遅い筈だ。
少年は中年男の脈を感じている……男の命が途絶える瞬間を肌で直接感じとっている。
「……っ……!?」
その事に気づいたカリオペは、ブルッと身体を震わせた。
カリオペはターゲットになるべく触れないようにしているが、直接触れて命が消える瞬間を感じるのは最高のエクスタシーじゃないだろうか?
(人の快楽の邪魔したくせに、自分はエクスタシー感じるなんてズルい!最っ低ぇ!)
カリオペは一方的に怒りを覚えて少年を睨む。
少年にとっては良い迷惑だし、そんな事でエクスタシーを感じるのはカリオペぐらいだ。
嫌な視線を感じたのか少年は反対の手で首筋を擦りつつ、中年男の灯火が消えるのを待っていた。
中年男が息耐えるのをしっかり確認した少年は、立ち上がって部屋を出る。
暫くするとドタドタと人が来るのが分かって、カリオペは立ち去る事にした。
「旦那様っ!!」
「貴様っ!!」
ガシャーン
そんな声と音が背後から聞こえたが、カリオペには関係ない。
ターゲットは死んだ……最期を看取れなかったのは残念だが、仕事はこなしたので良い事にしてカリオペはアジトへと足を向けた。