赤い眼-21
「まあ、なあ」
「だから言わない」
グビッとお酒を飲み干したカリーは、ズイッとスランにグラスを突きつけた。
おかわり、という事らしい。
スランは苦笑してそのグラスに酒を注いでやり、やけ酒に付き合う事にした。
その時
ドン ドン ドン
船が何かにぶつかったような音がしてグラグラ揺れる。
「ふにゃっ?!」
「うおっと」
カリーはグラスをお手玉して滑り落とし、スランがそれを床に落ちるギリギリでキャッチした。
「なぁにぃ?」
音は治まったが船は揺れてるし、外では騒がしい声がする。
「おい、眼」
「あ、そうだった」
野次馬根性丸出しで部屋を出ようとしたカリーにスランが声をかけ、カリーは慌てて洗面所に戻りコンタクトをつけた。
部屋を出て甲板に出るとゼインとポロの姿も見える。
(う……声かけ辛い……)
ゼインは鼻が良い……カリーとスランがヤッたかどうか匂いで直ぐ分かる。
「おい、何かあったのか?」
そんなカリーを無視してスランが2人に声をかけた。
(意地悪ぅ〜)
ゼインの嗅覚が鋭い事も話してあるからカリーが躊躇する理由も分かる筈なのに……。
カリーはスランを軽く睨みつけ、スランはそれを鼻で笑うと持ってきたジャケットをカリーの肩にかけてゼイン達の所へ行った。
「よぉ、見ろよ。イルカだってよ」
振り向いたゼインはスランとカリーに気づいて海を指差す。
「イルカぁ?」
カリーは手すりに両手をついて身を乗り出した。
2つの月が明るく照らす海面を、5頭ほどのイルカが交互に跳び跳ねている。
「凄ぉい〜綺麗〜」
飛び散った海水が月の光を反射してキラキラと光り、幻想的な光景が広がっていた。
(お前のが綺麗だっつうの……)
少し離れた場所で海に見入るカリーは、シンプルなドレスを着ていていつもと違う雰囲気だ。
ゼインの視線を追ったポロは、カリーの手首の痣を見つけて眉をひそめる。
ゼインもそれに気づいて深く考えずにカリーに声をかけた。