赤い眼-12
「確かに」
少年はクツクツ笑って上げていた手で顔を覆う。
「ね?死なないならさぁ、ご飯付き合ってよ?」
カリオペの誘いの言葉に少年は指の間から怪訝な目を向けた。
「だってお腹空いたしぃ〜1人でご飯食べるのもつまんないんだよねぇ」
もう少し……せめて薬の効力が消えるまで一緒に居たい……カリオペは必死になって言い訳を考える。
「益々変な奴……俺、奴隷だぞ?」
「ふぅん?」
「それに血まみれだし……どう考えても厄介者なんだけど?」
「う〜ん……別に良いんじゃない?」
良い理由が思い浮かばず、カリオペは曖昧に答えるしかなかった。
(……お願い……)
膝を抱えた両手を握って少年が行くと言ってくれるのを祈る。
「ホント……変な奴……」
少年は腹筋を使ってよいしょっと起き上がった。
「おごってくれるんだろ?」
カリオペを覗き込んだ少年の顔は、悪戯っ子のような笑顔。
「……うんっ!」
これでもう少しだけ一緒に居られる……カリオペは嬉しくなって満面の笑顔を少年に返した。
とは言っても2人ともびしょ濡れだし、少年に至っては血まみれだし……どこの食堂でも断られそうなので、カリオペはテイクアウトの食事を調達して宿をとった。
宿なら冒険者も良く利用するので、びしょ濡れだろうが血まみれだろうが気にしない。
「とりあえずシャワー浴びちゃってぇ〜」
カリオペにバスルームに追いやられた少年は、ありがたくシャワーを使わせてもらう。
その間に宿主から救急箱を借り、少年が着れそうな服も買ってきた。
カリオペが部屋に戻ると少年はタオルを腰に巻いた状態でテイクアウトの唐揚げにかぶりついていた。
「ちょっとぉ!一緒に食べなきゃ意味ないぃ〜!」
「悪ぃ悪ぃ」
カリオペが怒ると、また悪戯っ子の顔。
(うぅっ可愛いぃ〜)
今まで遠目から見てただけだったから気づかなかったが、話す口調は生意気なのに表情や仕草がいちいち可愛い。
なんだか萌えてしまう。
「んもぅっほら、こっち座って」
カリオペは頬を膨らませてソファーに座れと少年を促した。
「あ?」
「怪我!してるでしょ?」
「ああ……治った」
「はあ?」
殆どが返り血だったとはいえ、ここまで移動する時の足の引きずり具合やらを見たらかなりの深手を負っていた筈だが……。